Q SEATについて

1.はじめに

 今年度鉄道研究部に入部しました新米、中学1年の**です。今回が初めての研究執筆になるので、文章の構成や表現など、まだまだ未熟な部分が多いですが、最後までお読みいただけると嬉しいです。

2.大井町線の概要

①路線について

 大井町線は、大井町駅と二子玉川駅を結ぶ東京急行電鉄(東急)の路線です。路線ナンバリングはOMで、路線延長は10.4kmです。線内折り返しの列車は少なく、ほとんどが田園都市線に直通し、溝の口駅まで運行されています。

 大井町線には、二子新地駅、高津駅に停車するB各停、二子新地駅、高津駅を通過するG各停、大井町線内の主要駅に停車する急行の3種類の種別があります。各駅のホームの長さの都合上、B各停とG各停は5両編成、急行は7両編成となっており、それぞれ専用の車両が運用に就いています。また、大井町線は、田園都市線のバイパスの役割も担っています。田園都市線の最混雑区間は池尻大橋駅→渋谷駅で、混雑率は185%となっています(2017年度)。これは、全国で第8位の混雑率です。そこで利用客には、大井町線を経由して都心へ向かってもらうことで、田園都市線の混雑を軽減させています。

②夜間帯下りのダイヤ

 夕方ラッシュピーク時は、各停3本、急行1本の15分サイクルで構成されています。急行の直前に発車した各駅停車は、旗の台駅で急行の接続を受け、追い越されます。ほかの各駅停車は、終点溝の口駅まで先着します。

 夕方ラッシュピーク収束後は、急行がおおよそ20分に1本走り、間に各駅停車が2~4本走ります。夕方ラッシュ時ピーク時、ラッシュ収束後のいずれも、一部の急行が長津田まで運転されます。

▲大井町線の路線図 (二子玉川駅~中央林間駅は田園都市線)

3.Q SEATの概要

 Q SEATは、品川エリアから田園都市線沿線へ帰宅をする通勤客向けに2018年12月14日に開始されたサービスです。

 これは、夕方ラッシュの時間帯に大井町駅を発車する、6020系が充当される急行の1両を座席指定扱いする、というものです。ただし、ほかの号車は一般の急行として扱われます。6020系の3号車が、ロングシートとクロスシートを転換できるL/Cカーを導入したQ SEAT用の車両となり、平常時はロングシート、Q SEAT扱い時はクロスシートとなります。1便当たりの定員は45名です。

▲座席指定サービスを行う6020系。

中間車1両がL/Cカーに置き換えられる。

▲L/Cカーが導入された京王5000系の座席。

この座席はクロスシートにもなる。

 指定席券料金は400円で、平日に、大井町駅発19:30、20:30、21:20、22:27、23:09の合計5本が運転されます。時刻は現行ダイヤと同様です。5本すべてが田園都市線に直通し、長津田駅まで運転されます。

 大井町駅~自由が丘駅は乗降可能駅、二子玉川駅~鷺沼駅は降車専用駅、たまプラーザ駅~青葉台駅は指定席券なしで自由に乗り降りできるフリー乗降駅となっています。

4.Q SEATの問題点

 それでは、ここからはQ SEATが抱える問題点について考えていきます。

①輸送量の問題

 前々章で述べた通り、Q SEATは、急行列車7両のうち1両で座席指定を行うというものです。しかし、座席指定サービスを扱う車両が1両だけであること、また、1日5本のみの運転のため、利用できる乗客が一日225人と極めて限られてしまうことなどが問題として挙げられます。また、座席指定料金が400円という値段のため、Q SEATの開発にかかった費用の回収も難しくなっています。さらに、7両中1両を着席サービスに使うため、残りの6両の混雑が悪化してしまう恐れもあります。

②予備車両

 座席指定サービスを行う列車は6020系のみです。そのため、19:30から23:09までの約220分間で大井町駅発の6020系を5回走らせる必要があるため、2編成を使用して大井町駅と長津田駅を往復する必要があります。すると、在籍する6020系2編成をすべて使用することになるため、予備編成を用意することができません。

 6020系を増備する計画も今のところはないため、仮に6020系が故障してしまった時などは、代わりの列車がなく、座席指定サービスを中止にせざるを得なくなってしまいます。また、6020系の車両点検をする場合に、その代わりの列車を捻出するためにも予備編成は重要な問題となってきます。

▲Q SEATを連結している6020系のダイヤグラム。ご覧の通り、2編成を使用していることが分かる。

(点線は回送列車)

5.解決策

①輸送量の問題

 しばらくは現状維持をするしかないと思います。ただし、もしもQ SEATの実績が好調だった場合、すべての車両を座席指定にした列車、いわゆる「ライナー」を運行することもよいと思います。こうすることによって、Q SEATがより利用しやすいものとなり、沿線のブランド価値の向上も見込むことができます。

 また、残りの6両の混雑の悪化については、現在溝の口駅止まりとなっている急行の一部を、長津田まで延長すると良いと思います。

②予備車両

[1] Q SEATの営業の中止

 6020系が故障したときや、点検をしている時などに、Q SEATの営業を中止するという案です。Q SEATの営業を中止することによって、Q SEATを連結していない6000系もその運用に入ることができ、6020系を点検などに回すことができます。ただ、Q SEATの営業の中止は、それと同時にサービスの質の低下も招きかねないため、あまり得策ではないと思います。

[2]6020系の増備

 これは、6020系が不足したときのために、代わりの6020系を新たに製造する、というものです。こうすることによって、6020系が故障などで運行不可能となった場合も、この予備編成をかわりに使用することで、Q SEATを中止することなく運行できます。ただし、前代の急行用車両である6000系がまだ登場から10年程度しか経っていないため、置き換えには向いていません。また、急行車両が必要以上に発生してしまうなどといった問題も抱えています。

大井町線急行用車両の6000系。

2008年に登場し、現在も活躍している。

[3]既存の6000系にQ SEATを連結する

 これは、現在存在している前代急行の6000系に、新造したQ SEATを連結する案です。これにより、無駄な編成を作る必要がなくなり、また、コストの削減を実現することも可能です。ただし、この案は、1両ではあるものの、廃車が発生してしまう、といったような問題もあります。

 以上の中で、私は、既存の6000系にQ SEATを連結するのが最も良いと考えました。

 理由として、この案は、余剰をなくせる、コストを削減させることができるということで優れていると考えたからです。こうすることによって、予備編成の問題は解決できると思います。

6.まとめ

・ Q SEATの輸送量の問題は、しばらくは現状維持。好調だった場合は、ライナーの導入の検討もすべきである。

・ 予備編成の問題は、既存の6000系にQ SEAT車両を連結して対応する。

7.おわりに

 いかがでしたでしょうか? Q SEATはまだ始まったばかりなので、今後の行方に注目していきたいです。拙い文章でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

8.参考資料

・東急電鉄 『大井町線急行列車の7両化と新型車両6020系の導入』

http://www.tokyu.co.jp/171012-21.pdf

・東急電鉄 『大井町線の有料座席指定サービス「Q SEAT」を開始します!』

http://www.tokyu.co.jp/image/news/pdf/20181023-1.pdf

・国土交通省 公表資料 『混雑率データ』

http://www.mlit.go.jp/common/001245932.pdf

・東急電鉄 2017年度乗降人員

http://www.tokyu.co.jp/company/business/railway/passengers/index.html

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