駆け込み乗車について

1.始めに

 皆さんこんにちは。高校一年・研究副班長の○○です。3年間の中学生活もついに終わり高校生となりました。研究を執筆できる機会も少なくなっていきますが、与えられた仕事をしっかりこなしていきたいと思います。さて、今回の研究のテーマは「駆け込み乗車について」です。これは中学3年生の時文化祭の研究発表で扱ったテーマですが、他にテーマが思いつかなかったため流用することにしました。ですが、停車場の研究にするにあたってリメイクしましたので最後までお読みいただければ幸いです。

2.駆け込み乗車による問題

(1)遅延の発生

 下のグラフのように、首都圏における10分未満の小規模な遅延の原因の約54%が乗降時間の超過、ドア再開閉と言った乗降時の原因です。これらの中には駆け込み乗車によるものが多く含まれると考えられます。

(2)事故の発生

①東海道新幹線三島駅乗客転落事故

 駆け込み乗車した乗客が体を扉に挟まれたため扉を開けてほしいという合図をしました。しかし、駅係員、車掌が気付かず戸閉正常と認め発車したため乗客がホーム上を伴走した後に転倒し、引きずられたのち線路に転落し列車にはねられました。

②JR藤沢駅転倒事故

 構内のJR線と小田急線の乗り換え階段で、ホームに停車している列車に飛び乗ろうとして駆け下りていた利用客が転倒・転落し、別の利用客に背後からぶつかりました。

③ベビーカー引き摺り事故

 東京メトロ半蔵門線九段下駅で、駆け込み乗車をしようとした乗客のベビーカーがドアに挟まったまま発車し、ベビーカーが破損しました。

 ①・③は確認を行った職員側にも過失がありますが、①~③の全てにおいて駆け込み乗車をした利用者側に過失があります。

(3)危険性

 1995年の三島駅乗客転落事故を受け、戸閉直後の抑え圧力を弱める改良型戸閉装置の導入などの対策がされましたが、2016年にベビーカー引き摺り事故が発生しました。つまり、技術が進歩した現在でもヒューマンエラーなどにより事故が起こる危険があります。他にも駅構内や車内にいる乗客との衝突や、扉に挟まれたり衝突したりすることにより負傷する危険があります。

(4)体が扉に挟まる危険

 Osaka Metro堺筋線天神橋筋六丁目駅で、開いた扉が誤操作によりその直後に閉まったため、降りようとした利用客(駆け込み乗車ではない)が頭と肩を挟まれ頭部の打撲及び頸椎の捻挫と診断され約半年間通院しました。その利用客は訴訟を起こしOsaka Metroが解決金300万円を支払うことで和解が成立しました。

 自分の体を扉に挟んで駆け込み乗車する人を見かけますが、これには大きな危険が伴うということです。

(5)駆け込み乗車の原因

 私は駆け込み乗車の原因は主に3つあると考えます。

1つ目は、日本特有の時間に厳しい風潮です。1分でも早く目的地に到着しようとするため本数が多い都市部でもたびたび発生しているのだと思います。

2つ目は、体や荷物を挟んだり、合図したりすれば扉が開くという甘えです。特に体が扉に挟まることは前述のように大変危険ですが、実際には体が扉に挟まることに抵抗がない人もいるように感じます。

3つ目は、発車直前の過度な案内により乗客が集まるということです。発車ベルが鳴り終わっても列車の種別や行先、次の停車駅を案内するという光景をよく見かけますが、かえって駆け込み乗車を誘発していると思います。

3.駆け込み乗車に対する対策

(1)既に行われているもの

①駅や車内での放送、ポスターによる啓発

 鉄道各社では駆け込み乗車を防止するために啓発活動を積極的に行っています。「駆け込み乗車はおやめください」という放送は駅で何度も耳にしたことがあるはずです。また、駆け込み乗車が発生した場合は車内放送で注意することがあります。更に、駅や車内のポスターでも啓発活動を行っています。

駅の看板

発車標の表示

②ホームドア

 ホームドアを設置することで駆け込み乗車しようとする乗客が足止めされ駆け込み乗車が防止されます。東急電鉄が東横線・田園都市線・目黒線・大井町線の全駅に設置した他、JR東日本の首都圏エリアや相模鉄道で全駅設置が発表されるなど整備が進められています。

③かけこみ乗車防止キャンペーンの実施

 首都圏の鉄道各社では毎年4月に合同でかけこみ乗車防止キャンペーンを実施し、ポスターや車内放送で啓発活動を実施しています。


駅のポスター

④発車間際の列車は発車標に表示しない、もしくは点滅

 発車間際の列車は発車標に表示しない、もしくは点滅させるという鉄道会社もあります。例えば、相模鉄道の発車標では発車間際の列車が空欄になり、京浜急行電鉄の発車標では発車間際の列車が点滅します。発車間際の列車の種別や行先をわからなくすることで駆け込み乗車を防止します。


発車標の表示

 ここまでの対策は各社で行われています。この先は一部の路線や駅で独自に行われている対策です。

⑤車外スピーカーから発車メロディを流す

 JR常磐線各駅停車では、車外スピーカーから発車メロディを流しています。一般的に発車メロディは駅のスピーカーから流しますが、これでは音量が大きいのでホームだけでなく改札やコンコースにも聞こえてしまい駆け込み乗車の原因となってしまいます。そこで、車外スピーカーから発車メロディを流すことでホームにしか発車メロディが聞こえないようにして駆け込み乗車を防止します。

⑥ホームだけでなく改札でも接近メロディを流す

 相模鉄道いずみ野線緑園都市駅では、ホームだけでなく下の階にある改札でも接近メロディを流しています。一般的に接近メロディはホームでのみ流しますが、これでは改札にいる人に列車の接近が分からずゆっくりとホームに向かってしまうためホームで発車間際の列車に駆けこんでしまう原因となります。そこで、改札でも接近メロディを流すことで電車に間に合うようにホームに向かえるようにして駆け込み乗車を防止します。

(2)私が提案するもの

①次の電車が来るまでの時間を知らせる

 「次の電車が〇分後に続きます」というように、次の電車が来るまでの時間を知らせる放送をすると良いと思います。これによってその電車を逃してもすぐに次の電車が来ることを知らせることができ、駆け込み乗車を防止できると思います。ただし、これは長くても10分程度で次の電車が来るようなある程度本数が多い路線で有効です。これ以上本数の少ない路線で行ってしまうと、かえって利用客を焦らせてしまい駆け込み乗車の原因となってしまいます。

②過去の事例で利用客に駆け込み乗車の危険性を啓発

 前述の通り駆け込み乗車は大変危険な行為ですが、ここで紹介した事故などはこの研究を読んで初めて知ったという方も多いはずです。そこで先ほど紹介したような過去の事例で駆け込み乗車の危険性を啓発するべきだと思います。

③ホームだけでなく改札でも接近メロディを流す

 前述の通り相模鉄道いずみ野線緑園都市駅で行われている対策ですが、他の駅では行われていません。ですが、この対策は他の駅でも行われるべきだと考えます。改札とホームが離れている場合は、前述の通りホームにしか発車メロディが聞こえないようにすることで非常に有効な対策となるはずです。

④放送の音量を下げたり指向性スピーカーを使用したりして改札に聞こえないようにする

 前述の通りJR常磐線各駅停車で行われている対策ですが、車両によってはそもそも車外スピーカーがない場合もあります。このような場合でも、音量を下げたり、特定の場所に限定して音を届ける指向性スピーカーを使用したりして改札に聞こえないようにすることで駆け込み乗車を防止できます。こちらも改札とホームが離れている場合は、前述の通り改札でも接近メロディを流し電車に間に合うようにホームに向かえるようにすることで非常に有効な対策となるはずです。

⑤逆にホーム上では扉を閉める時に確実に乗客に知らせる

 ホームの放送が改札に聞こえないようにするのは有効な対策ですが、逆にホーム上では扉を閉める時に確実に乗客に知らせるべきです。首都圏のJRや地下鉄では各駅に発車メロディまたはベルが設置されていますが、大手私鉄でも主要駅以外は何も知らせずに発車する会社があります。実際、私の最寄り駅でも扉を閉める際に何も知らせません。これではいきなり扉が閉まることで慌ててしまい駆け込み乗車を誘発してしまいます。

そこで、ホーム上では扉を閉める時に確実に乗客に知らせることでホーム上の乗客が確実に乗車できるようにすべきです。発車メロディが設置されていない場合は車外スピーカーから発車メロディや乗降促進放送を流し、それもない場合は車掌が吹笛するとよいと思います。発車メロディはかえって駆け込み乗車を誘発するのではないかという方もいらっしゃるかもしれませんが、前述のように車外スピーカーから発車メロディを流せばホームにしか発車メロディは聞こえません。ですから、扉を閉めることを知らせて余裕をもって乗車してもらうほうが駆け込み乗車を防止できると思います。

⑥発車数分前に改札や待合室で放送を流す

 地方の路線や新幹線、特急列車など本数が少ない場合は発車数分前に改札や待合室で放送を流すと良いと思います。本数が少ない場合はある列車を逃してしまうと次の列車まで長時間待たなければならないため駆け込み乗車が発生しやすいですが、これにより乗客が余裕を持って行動することができ、駆け込み乗車を防止できます。改札や待合室で待っている人は駆け込み乗車をしないのではないかという方もいらっしゃるかもしれませんが、放送を流すのにそれほど労力は必要ないので流して損はないと思います。

4.終わりに

 さて、いかがでしたでしょうか。書くことがあまり思い浮かばず短い研究となってしまいました。次回はもう少し充実した研究を書きたいです。今回は駆け込み乗車について研究しました。他の利用客に衝突してしまったり列車を遅延させてしまったりするなど他の利用客に大変迷惑ですし、自身も負傷してしまう可能性があり大変危険です。朝寝坊してしまった時などに慌ててしまうこともあるかもしれませんがそんな時でも冷静になって落ち着いた行動を心掛けたいですね。

 最後になりましたが、ここまでお読みくださった皆さん、

本当にありがとうございました!

5.参考資料

・国土交通省

https://www.mlit.go.jp

・JR東日本:東日本旅客鉄道株式会社

http://www.jreast.co.jp

・相鉄グループ

http://www.sotetsu.co.jp

・東京メトロ

http://www.tokyometro.jp

・日本経済新聞

http://www.nikkei.com

・毎日新聞

http://mainichi.jp

・J-CASTニュース

http://www.j-cast.com

おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました。掲載されている情報は研究公開当時のものです。現在とは若干異なる場合があります。

浅野学園鉃道研究部 『停車場』アーカイブ

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