交通広告とデジタルサイネージ

1.はじめに

 こんにちは。あっという間に高二になっていた○○です。コロナが収まる気配がありません。我々の高校生活はこのまま終わりを告げてしまうのでしょうか。

 それはさておき、今回の研究は交通広告をテーマにしました。特に、近年導入が進んでいるデジタルサイネージについて扱っていきたいと思います。

 拙い文章ですが最後までお読みいただければ幸いです。

2.交通広告とは

 まず、交通広告がどのようなものかを説明します。

 交通広告は読んで字の如く、交通機関を媒体とした広告のことを指します。国土交通省のデータによる、2021年の鉄道の利用客数の推移は以下の通りです。

 これを見ると、一年を通して多くの人が鉄道を利用していることがわかります。利用者が多ければそれだけ高い広告効果が見込めるため、身近な鉄道を媒体とした交通広告は効果があると言っていいでしょう。

 交通広告と一括りに言っても、多様な種類があります。鉄道に関して言えば、鉄道車両自体(側面、内部など)を用いた広告と、駅などの関連施設での広告の二つに分けられます。本稿では駅などでの広告については割愛し、車体に関する広告を扱っていきたいと思います。

①中吊り広告

 車両の天井部分から紙に印刷された広告を吊り下げる形の広告です。乗客が見上げる位置で広告できるため注目されやすいという特徴があります。全国的にB3サイズという規格が定められていて、鉄道会社や路線によって変更を加える必要がないため全国規模での広告展開が容易です。

②ポスター・ステッカー広告

 網棚の上に掲示された窓上ポスター、ドアの左右に掲示されたドア横ポスター、そしてその上やドアの窓部分に貼られたステッカー広告がこれに当たります。

 窓上ポスターは路線ごとにサイズの規定が異なりますが、1週間~1ヵ月と比較的長い期間掲出されるため、鉄道を毎日利用するような人に刷り込みやすいという特徴があります。

 ドア横ポスターは、通勤時間帯に人が密集しやすい場所に広告を掲示できるため、内容の伝達効率に優れた広告方法です。

 ステッカー広告はより乗客の目の高さに近い広告です。そのため書店にあるポップのように乗客の目につきやすく、集客効果が高いのが特徴です。こういった背景から化粧品や食品など、購買行動に直結しやすい広告内容が多い傾向にあります。

③ドア上ポスター

 細長い形状が特徴的な、ドアの上に掲示されたポスターです。後述する車内案内表示装置の近くにあるため、乗客の注目を集めやすいのが特徴です。

④車両案内表示装置

 ドア上に設置された、電光掲示板の形式で情報を伝える装置のことです。近年はデジタルサイネージへの代替が進んでいます。

▲中吊り広告

▲ポスター広告(窓上ポスター)

▲ステッカー広告

▲車両案内表示装置とドア上ポスター

 これらの広告は鉄道会社にとって収益の一部にもなるので、より効果の高い広告方法を編み出していくことが必要です。

3.デジタルサイネージとは

 デジタルサイネージとは液晶ディスプレイなどを用いて情報を発信するメディアのことです。従来のポスターや看板とは異なり、映像による広告が可能なことがもっとも大きな特徴と言えます。

 映像による広告は静止画に比べて伝えられる情報が多いため、訴求力が高いと言われます。例えば「食品の写真だけの広告よりも食品を食べている人の映像を流す広告の方が、視聴者は食欲を刺激されてその食品を購入する」という状況が挙げられます。

▲デジタルサイネージ化された車両案内表示装置、ポスター広告

 広告にデジタルサイネージを使う利点は以下の三点です。

①表示する広告の数を増やせる

 デジタルサイネージでは映像が用いられるため、ポスター広告に比べて多くの広告を表示できます。種類が増えると、その分広告収入も増えます。鉄道会社によって、広告部門を別会社にしている場合と本社に包含している場合とがありますが、いずれにしろ広告収入が増えれば他事業への資金や、車両整備に回せる費用が増えるので表示できる広告が増えるのは大きなメリットと言えます。

 また、表示する広告を変更する際に紙を媒体とする広告よりも作業が容易です。紙の場合には手作業での貼り換えが必要ですが、デジタルサイネージではデータを切り替えるだけで済みますそのため、デジタルサイネージの導入は人件費削減にも繋がります。

②広告の種類が多様化する

 デジタルサイネージを導入することで広告の種類が多様化します。①で挙げた広告量の増加ともつながってきますが、従来のポスター広告では一定期間、一つの広告しか出せないものの、デジタルサイネージでは表示する動画を変えるだけでいいので、同時の期間に複数の広告を出すことが出来ます。

 通勤列車などに広告を出す場合、毎日同じ広告では利用客も飽きてしまい逆効果です。デジタルサイネージであれば紙を媒体とした広告よりも入れ替えが容易なため、種類を増やすことも簡単です。利用客に飽きられないような広告を配信し、広告効率を上げることが出来ます。

 もう一点多様化という側面から述べると、テレビCMなどに字幕などを補ったものに加え、オリジナル番組の作成が挙げられます。JR東日本での例を挙げると、任天堂の広告は自社のゲームのCMに加えて「どうぶつの森」や「スーパーマリオ」などをもとにしたクイズなど(前頁の写真参照)を流すことで鉄道利用客の目を惹きつけています。

③広告以外の情報伝達が容易になる

 デジタルサイネージの利点として3つ目に挙げられるのは広告以外の情報伝達です。天気予報や周辺路線の遅延・運休情報、次の駅までの所要時間などこれまでの車両案内表示装置では伝えづらかった情報の伝達が容易になりました。

 デジタルサイネージの導入前は乗務員の放送による案内が中心でしたが、放送を聞き逃した場合にも画面にしばらく注目しておけば自分の得たい情報を知ることが出来ます。

4.問題点とその解決策

 第3章からデジタルサイネージの利便性の高さはお分かりいただけると思うのですが、一方で電子機器であるということもあり、設置時の初期費用やメンテナンスの費用など、維持していくためにかかる金額が大きいという欠点があります。また、故障した際にはメーカーで修理する必要があり、手間がかかります。

 その解決策は、まずは幅広く設置を進めることです。

 一見真逆の対応に思えますが、電子機器である以上、故障の可能性は拭い去れません。そのため、よりデジタルサイネージを普及させることによってかかるコストを下げていくという方法をとるのが現実的だと思います。

▲画面が乱れている車内のデジタルサイネージ

5.交通広告とデジタルサイネージの今後

 ここまでさまざま述べてきましたが、今後デジタルサイネージが交通広告において大きな役割を果たすことは間違いありません。

 技術の進展で今後ますます利便性が向上するのは明らかで、ユニークな広告は鉄道技術に大きな利益を与えるのではないでしょうか。

 しかし、紙媒体の広告の人気も決して切り捨てられるものではありません。2014年、山手線に新型車両E235系の導入が発表された際、初めは中吊り広告が廃止される予定でしたが、広告業界からの強い要望により中吊り広告用の金具が後付けされました。また、中吊り広告にマスクを張り付けたマスク会社の広告などユニークなものも登場していて、今後交通広告とデジタルサイネージをどう共存させていくかという点も注目すべき点だと思います。

6.おわりに

 いかがでしたか。膨らませ方に悩んだ結果、主張の起伏に乏しい研究になってしまった気がします。次の研究が鉃研人生最後の研究になるので、後悔のないように書いていきたいと思います。

 この「停車場」を手に取っている受験生と中学1年生のみなさん。良かったらこの鉃道研究部を入部先選択肢に入れてみてください。鉄道に興味がなくても大丈夫です。なぜなら、私が鉄道に興味がないからです。それでも5年間、しっかり活動して来られました。むしろ、これまで触れる機会のなかったものに触れるチャンスになると思います!

 さて私の気持ちは最後の研究に書くために取っておくとして、今回はこれで締めたいと思います。お読みいただいたみなさん、顧問の先生方、班員諸君に心から感謝します。

 ありがとうございました!

7.参考文献

▶交通広告ナビ https://koutsu-navi.com/

▶大阪オリコミ https://www.osakaorikomi.co.jp/

▶交通広告ドットコム https://www.transit-ad.com/

▶IT mediaビジネスOnline https://www.itmedia.co.jp/business/

▶国土交通省 https://www.mlit.go.jp/

おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました。掲載されている情報は研究公開当時のものです。現在とは若干異なる場合があります。

浅野学園鉃道研究部 『停車場』アーカイブ

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