南武線の混雑緩和に向けて

1.はじめに

 こんにちは。高校一年の研究班員です。今回は、中1の時に初めて執筆した研究をリメイクして、アーカイブサイトに公開したいと思います。もしお手元に元の古い研究があれば、見比べてみても面白いかもしれません。

 この研究では、新子安からもほど近いところを走行する、南武線について考えていきたいと思います。

2.南武線の概要

 南武線は神奈川県川崎市の川崎駅と東京都立川市の立川駅を結ぶ路線です。全線で快速運転をおこなっており、停車駅は次の表のようになっています。JR東日本が指定した他の鉄道会社との乗換駅を多く持つ路線(東京メガグループ)に指定されています(京葉線、横浜線、武蔵野線も指定されています)。現在走っているのは、南武線用に製造されたE233系8000番台や、中央線からの改造車であるE233系8500番台です。川崎発武蔵中原行、登戸行、稲城長沼行など区間運行が多いことも特徴です。


南武線の停車駅表

南武線を走行するE233系8000番台

3.混雑率は189%

 次の表をご覧ください。


 南武線は第4位になっており、首都圏の路線の中でもかなり混んでいる方であるといえます。また、南武線には横須賀線の新川崎駅も使える鹿島田駅、人気上昇中の武蔵小杉駅や、新たに小田急線の快速急行の停車駅となった登戸駅があり、また川崎市の人口自体が増加しているため、今後混雑率はさらに上昇すると考えられます。

 混雑率の基準は次のようになっています。

  • 100%:定員乗車
  • 150%:広げて楽に新聞を読むことができる。
  • 180%:折りたたむなど無理をすれば新聞を読むことができる。
  • 200%:体がふれあい相当圧迫感があるが、週刊誌などなら何とか読める
  • 250%:電車がゆれるたびに体が斜めになって身動きができず、手も動かせない。

 朝の南武線は、この一覧のうち、180%から200%くらいの雰囲気であるとわかります。

 また、沿線にラゾーナ川崎や、生田緑地(日本民家園や藤子・F・不二雄ミュージアムなどがあります)など観光ポイントがあり、土休日でも車内はかなり混んでいます。

 まとめると南武線の課題は混雑が激しく、土休日も乗客が少ないわけではないということになります。混雑緩和のための策を検討していきます。


武蔵小杉駅前の様子。まだまだ発展しそうだ。


川崎市の近年の人口推移(横軸は平成ー年) 増加傾向にあるといえる。


4.解決策

Ⅰ車両の増結

 現在、南武線は6両編成になっており、それが原因でラッシュ時はもちろん、それ以外の時でもとても混んでいます。そのため、列車の増結が必要だと考えられますが、ある課題があります。それは、ホームが6両編成以上に対応できない駅があることです。増結を見越して、写真3の武蔵新城駅のように8両編成に対応したものもありますが、ほとんどの駅で対応できていないのが現状です。その中でも、津田山駅はホームの両側を踏切に挟まれています。そのため、ホームの拡張工事が困難となっています。


武蔵新城のように長編成に対応している駅もある


津田山駅は踏切に挟まれていて、ホーム拡張工事は困難。

なお、写真は現在より古い駅舎の時代のものだが、現在も踏切の位置に変化はない。

① ドアカット

 ホームが長い編成に対応できないときに行われる、一部のドアを閉めたまま停車するという方法です。現在の田浦駅や高架化する前の梅屋敷駅などでとられていた方法ですが、一部のドアが閉まりっぱなしとなるのはかなり不便になってしまうので、避けるべき方法です。また、ラッシュ時には一部の号車に乗客が偏ってしまうので、すでに混雑率の高い南武線では導入することに適していません。よって、ドアカットはふさわしくないといえます。

② 踏切の廃止

 次に、踏切を廃止するという方法も考えられます。しかし、現在、日常的に踏切を使っている人々には現在の生活を大幅に変えるので、周辺自治体から許可をもらうことは非常に厳しいでしょう。よって、この案もふさわしくありません。

 また、高架化を伴わないホームの拡張工事は、一例に東海道線川崎駅ホーム拡張工事で丸1日使って行われています。南武線の場合、ほとんどの駅で同じような作業をすることになるので、より時間がかかってしまうと予想されます。(写真4)。また、東海道線の場合は、横須賀線の武蔵小杉駅経由や、京浜東北線が走っているなど並走路線があり、特急など一部列車を横須賀線経由で運転したり、京浜東北線での移動を案内したりすることができました。しかし、南武線ではこのような対応が出来ないため、一部区間または全区間で運休になる可能性が非常に高く、利用客にとって非常に不便になってしまいます。よって地上のままでホームを拡張する案はこの点においてもふさわしくないといえます。


東海道線川崎駅ホーム拡張工事の様子

③ 高架化

 最後に、高架化という方法が考えられます。実は現在、南武線の尻手駅付近から武蔵小杉駅付近までを高架化するという計画があります。この区間は周辺が住宅地であり、一見高架化工事ができないように感じられますが、どのようにして高架化の工事をするのでしょうか?

 この工事で用いられる予定の工法は、「仮線高架工法」です。では、これがどのようなものなのかを説明していきます。

 次の図をご覧ください。まず、現行の線路を仮線路に移します。(なお、この図では左側が川崎方面の上り線、右側が立川方面の下り線の線路になっています)


 次に、上り線の高架を建設し、仮線路から切り替えます。


 下り線も建設し、仮線路から切り替えて工事は完了です。


 仮線路だったところは道路にして整備し、また高架下のスペースを有効活用する(例:店舗・駐輪場)としています。


 この工法であれば、側道のある区間はそこを利用することができ、そうでないところでもあまり多くの土地を買収する必要がありません。

 この工法を用いて、ホーム拡張工事の厳しい区間を高架化し、ホームを延長するということが、南武線の長編成化時の対策としてふさわしいと思います。

 線路を高架化することで、踏切を廃止できます。このことによって、線路をまたぐ移動が楽になるほか、JR東日本側も踏切の安全確認の作業が不要になるなど、高架化のメリットは大きいと思います。

 また、車両についてですが、南武線は利用者の多い路線で、車両導入によって運賃を回収できないということはないと思われるので、単純に新造して導入すれば思います。

Ⅱ列車の増発

 次に考えられるのは列車の増発です。しかしながら、南武線のラッシュ時のダイヤは、次の川崎駅の時刻表のように非常に過密であり、列車増発は難しいといえます。


凡例 無印:立川行 (中):武蔵中原行

(溝):武蔵溝ノ口行(登):登戸行(稲):稲城長沼行

5.まとめ

 南武線の混雑率の解消方法としては、南武線の線路を高架化し、それに合わせて列車を長編成化する方法がふさわしいと思います。

6.おわりに

 いかがだったでしょうか。初めて執筆した研究をリメイクしたので、発表当初のものより若干は読みやすく、そしてわかりやすくなったと思います。今になって自分の書いた研究を振り返ってみると、執筆能力が少しは上がったな、と感じます。この調子で残りの期間もより質の高い研究をかけるように頑張っていきたいと思います。

 ちなみに、あまり関係ありませんが、なぜリメイクしたかというと、いつかどこかで研究をリメイクする!といった覚えがあるからです。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

7.参考文献

書籍

生田誠著「南武線・鶴見線 街と駅の一世紀 昭和の街角を紹介」

ウェブサイト

川崎市公式ウェブサイト http://www.city.kawasaki.jp/index.html

国土交通省 http://www.mlit.go.jp/

東洋経済オンライン https://toyokeizai.net/


浅野学園鉃道研究部 『停車場』アーカイブ

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