鉄道ファンのマナーを考える

1.はじめに

 こんにちは。気づいたら高校二年生になっていました、**です。研究を執筆できるのも残り2回となってしまいました。時が経つのは本当に早いですね。今回もよろしくお願いします。

 さて、今回は鉄道ファンのマナーについて執筆していきます。鉄道ファンのマナーについてはたびたび問題視されていますが、改めてマナーについて一鉄道ファンとして考察する必要性を感じ、この停車場で執筆することを決めました。具体的には、我々鉄道ファンのあり方、さらには各鉄道会社の対応のあり方を、僭越ながら私が考えていくことにします。最後までお読みいただけますと幸いです。

2.迷惑行為~地方鉄道編~

 早速、鉄道ファンのマナーについて調べてみると、鉄道ファンのマナーの悪さが露呈した事案がいくつも見つかりました。多くは鉄道の撮影時のトラブルが多いように見受けられました。

まずは以下の文章をご覧ください。

①いすみ鉄道

 この寒いのに沿線にはご覧のようにたくさんのお客様が撮影にいらしているようです。
 真冬の枯野原の田んぼの真ん中に10名以上の人たちが、今か今かとキハを待っているシーンは、この地域にとっては「奇跡」でしょう。
 でもそうなると、当然こういう連中も来るのです。

(線路内に立ち入って撮影している「撮り鉄」の後ろ姿を撮影している写真を載せて)

 私は鉄道ファンという人たちは、きちんとしている人たちが多いと思っていますが、分母が大きくなると、つまり、たくさんの人数が来るようになると、人間には一定の割合で頭の悪い奴や、物事を理解できない奴が存在しますから、当然、そういう人間が目立つようになります。

 ということで、こういう連中が散見されるようです。

2018.1/7「鳥塚亮の地域を元気にするブログ」より一部抜粋


これは、いすみ鉄道の前社長である鳥塚亮氏のブログを抜粋したものです。鳥塚氏によると、このブログが掲載される前日の1/6にはいすみ鉄道を走るキハ52形を撮るべく、たくさんの撮り鉄がいすみ鉄道を訪れていたようですが、その中にマナー違反を犯す撮影者がいたようです。

 さらに鳥塚氏は…


 皆さん、見かけたら注意してあげてください。
 でも、注意するのもコミュニケーションですから、上手に注意してくださいね。
 何しろ相手は阿呆連中ですから、ふつうの会話が理解できない可能性がありますから。

2018.1/7「鳥塚亮の地域を元気にするブログ」より一部抜粋

などと、皮肉交じりに痛烈に批判しています。

 鳥塚氏のブログを拝見してみると以前にも同内容の記述がありました。

(菜の花畑に入り込んで撮影する「撮り鉄」の写真を載せて)
菜の花畑に入り込んで花を踏みつける阿呆どもです。
菜の花を踏みつけても平気なのは阿呆の証拠ですが、カメラマンがたくさんやってくる季節になると、分母が拡大する分、阿呆の数も増えます。

今日も昨日も、そういう阿呆連中のために非常ブレーキをかけて停車した列車が何本もあります。

2016.4/3「鳥塚亮の地域を元気にするブログ」より一部抜粋

 この鳥塚氏のブログからいすみ鉄道は毎年菜の花が荒らされるという迷惑行為を被っていたと見られます。もちろん沿線の植物を荒らすような行為は許されるはずがありません。

②真岡鐡道

土日は桜も満開となり、こちら北真岡 第二駒塚踏み切り付近はかなりの撮影者でした。写真は先週、鎖で三脚、脚立が結ばれていた所です。どう感じますか?踏みつけられた菜の花。何を撮影したいのですか?
2016.4/10「真岡鐵道株式株式会社公式facebook」 より一部抜粋

とのコメントと共に、無残に踏み荒らされた菜の花畑の写真が投稿されていました。

 このように鉄道ファンのマナーの悪さが指摘されています。今回はいすみ鉄道や真岡鉄道を取り上げましたが、他にもさまざまな鉄道会社が苦言を呈しています。主な迷惑行為を以下にまとめました。

・線路敷地内に侵入

・私有地に侵入

・菜の花が踏み荒らされる

・フレームインした障害物(植物や花など)の伐採


↑いすみ鉄道 キハ52形


↑真岡鉄道のSL(提供:部員)

3.迷惑行為~都市圏編~

①線路内に侵入

騒ぎは2010年2月14日の午前10時半頃、大阪府柏原市のJR関西線、河内堅上駅付近であった。上下線の線路脇に数人が脚立を立て、カメラを構えたからだ。運転の一時見合わせもあり、警察も出動する事態にもなった。退去を命じられて騒ぎはおさまったが結局、関西本線は上下線19本が運休し、合計26本が遅れ、およそ1万3000人に影響があった。
2010.2/20 「J CASTニュース」より一部抜粋

 この記事によると2月14日は年に数回しか運行されない臨時列車「あすか」が運行されたようで、それ目当てに大勢の鉄道ファンが集まったそうです。

 鉄道ファンが線路内に侵入したという事案は他にもたくさんあり、前ページのように列車を緊急停車させてしまうこともあります。列車が緊急停車すると当然遅延が生じますから、列車の利用客に大きな迷惑をかけることになります。

②JR東日本 京浜東北線

 2010年1月24日、JR京浜東北線にて209系電車の引退日のことです。

 その209系の最後の姿を見届けようと多くの鉄道ファンが集まりました。その日は日曜日でしたが、先頭車は通勤ラッシュ並に混雑していたそうです。この209系の車内で鉄道ファンが様々な迷惑行為を行いました。

 ほとんどが男性のその集団は、駅に到着するたびに「うおー!」という歓声を上げていた。そして、ドアが開くと同時に一斉にホームへ駆けだして写真を撮り、また駆け足で車両に戻るという動きを繰り返す。車内を見渡すと、座席では靴を脱いで立ち上がり、うれしそうに車内を眺める少年の姿もある。隣に座った初老の女性は、少年が背負ったバックパックが何回もぶつかり、思わず顔をしかめているが、車内で大声を上げる集団は誰も少年をとがめようとしない。
 そのうち、一般の乗客が乗ろうとすると、満員の車内から、甲高い叫び声が聞こえてきた。
 「一般人は乗れませーん」
 「鉄ヲタ専用車両でーす」
 途中、外国人とみられる親子が乗ってきたが、父親に抱かれた幼児は、あまりの騒音に泣き出してしまった。何が何だか分からない様子の親子は、次の駅で慌てて下りる羽目に。
 午後6時13分。京浜東北線を走る最後の209系が終点の南浦和駅に到着する時間になったが、その列車は定刻を過ぎても姿を現すことはなかった。やっと先頭車両に設置されたヘッドマークが見えてきたのは、予定時刻を20分以上も過ぎたころ。一連の騒動でダイヤが乱れたとみられるが、「まあ、こういう車両ですから」。ホームで警備を行う駅員は、あきらめた口調でこうつぶやく。
 列車がホームに滑り込む。ドアが開いた瞬間、満員の車内からカメラを持ったたくさんのファンが駆け降りた。ヘッドマークを見ることができるホームの両端は、たちまちカメラを持った鉄道ファンで埋め尽くされた。
 「押すなよ!」「お前、邪魔!」
 こんな怒声も聞こえてくる。

2010.2/10「産経新聞」記事より一部抜粋

 この記事から分かることは、鉄道ファンの迷惑行為は場所を問わずに行われているということです。最終運用に就く車両に気を取られてしまうことは痛いほど分かりますが、周りに気を配れないのはどうかと思います。

 では、都市圏での迷惑行為もまとめてみます。

・線路内に侵入

・車内で大騒ぎ

・車両占拠

・怒号・罵声が飛び交う

4.その他の迷惑行為

①迷惑行為は命の危険

 2~3章で紹介したように、様々な迷惑行為が散見されていますが、痛ましい事故も起きています。

(2008年11月)29日午前9時10分頃、神奈川県茅ヶ崎市本宿町のJR東海道線の浜竹踏切で、貨物列車(26両編成)に男性がはねられ、死亡した。
 茅ヶ崎署の発表によると、男性が踏切内に三脚を立てて電車を撮影しており、倒れた三脚を立て直す際に接触したのを、通りかかった人が目撃しており、同署で男性の身元などを調べている。JR東日本横浜支社によると、同線は東京―小田原間の上下線で約55分間運転を見合わせ、1万4000人に影響が出た。
2008.11/29「読売新聞」記事より一部抜粋

 この記事で亡くなった男性は寝台特急「富士・はやぶさ号」を写真に収めるために撮影していたと見られています。この男性は踏切内で三脚を立てて撮影していたという証言があります。男性は列車にはねられ、東海道線は運転を見合わせ、交通インフラをストップさせてしまいました。当然、線路内での撮影は違反・迷惑行為であり到底許されざる行為です。この男性の自業自得と言えばそれまでなのですが、この事故は多くの鉄道ファンに、迷惑行為は命の危険すらあることを教えてくれました。

②盗り鉄

 2017年12月28日、鉄道ファンの聖地「鉄道博物館」(通称・鉄博=てっぱく、さいたま市)で起きた盗難事件。本館1階で展示されている旧国鉄時代の車両「クモハ455形」で、乗降ドア脇についていた「まつしま」の愛称板(レプリカ)が盗まれるなどしたのだ。防犯カメラを設置し警備員による巡回もしていたが、被害に遭った。
(略)
鉄博の事件は鉄道関連の設備を盗む「盗(と)り鉄」と呼ばれる悪質なマニアの仕業とみられ、全国の鉄道会社でも被害を受けている。昨年8月には、「秘境駅」で知られるJR土讃線(どさんせん)の坪尻駅(徳島県三好市)の待合室にあった記念スタンプが盗まれた。5カ月たっても戻らず、今年になってJR四国は新調した。
「AERA dot(朝日新聞オンライン)」記事より一部抜粋

 盗り鉄とは、主に車両を撮ることを趣とする「撮り鉄」をもじって、鉄道関連の部品を盗む人のことです。これは立派な窃盗罪に当たります。

5.鉄道会社・鉄道ファンがとるべき行動

 では、鉄道会社や我々鉄道ファンはどうすればいいのでしょうか?それぞれの立場で考えてみました。

①鉄道会社がとるべきこと

(1)マナー講習の実施

 前半に撮影地の菜の花が踏み荒らされたとして紹介した真岡鉄道は、2017年にプロの写真家によるマナーアップ講習会を開催しました。また真岡鉄道の車庫や構内で蒸気機関車の点検や灰落としの見学、さらに一眼レフカメラを貸し出し、簡単な撮影テクニックについての講座を開きました。

 同じようなマナー講習はゆりかもめなどでも実施しています。

 個人的に、マナー講習はあまり効果がないように思えます。理由はどうしても鉄道会社の自己満足に終わってしまう感じが否めないからです。真岡鉄道のマナー講習ですが、たしかに小さい鉄道好きの子どものいる家族など、ある程度の参加者は見込めるかもしれません。しかし、マナー違反をしているのは、そのような子どもよりも年上の人です。果たしてそのような人がマナー講習に参加するでしょうか?

(2)お立ち台の設置

 岩手県を通る第三セクター、IGRいわて銀河鉄道は、滝沢駅の2・3番線ホームの端に「Train Spotter’s(トレインスポッターズ)」という名のお立ち台を設置しました。IGR鉄道公認の撮影スポットとして好評を博しているそうです。普通、ホームでは使用が禁止されている三脚も、このお立ち台に限り、使用が認められています。

 さらに、えちごトキめき鉄道の二本木駅にも同じようなお立ち台が設置されています。

 私はお立ち台の設置は非常に有効と考えます。鉄道会社も公認ということで、自由に気負いなく撮影できる上、一般の利用客とも隔離され迷惑が及ぶ可能性も少ないからです。ただ、鉄道会社側も写真として見栄えの良くなるよいお立ち台を提供する必要があります。お立ち台の設置は言うなれば、鉄道会社が鉄道ファンを排除する動きではなく、共存する手を取りました。これにはどのような狙いがあるのかを以下に述べます。

※お立ち台を設置する狙いは?※

 鉄道会社がお立ち台を設置するなど、鉄道ファンと共存する動きが一部で見られるのは理由があります。鉄道会社の狙いは、鉄道ファンがSNSに投稿することによって観光客を集めようというものです。SNSによる発信によって成功した例は小湊鉄道、銚子電鉄などがあります。

 小湊鉄道は木造の駅舎や約60年前から走るキハ200系など、レトロな雰囲気が残っており、ここ数年人気を博しています。たとえば上総鶴舞駅は数多くのMVやCM、ドラマのロケ地として有名です。

私も先日、小湊鉄道に初めて行きましたが、若い女性観光客が多くて驚きました。鉄道ファンのSNSによる拡散が大きな反響が生まれた結果と言えるでしょう。

 銚子電鉄は、今やぬれ煎餅が全国的に有名となりましたが、これも鉄道ファンのSNSの影響による賜物です。下の銚子電鉄ぬれ煎餅ものがたりをご覧ください。

銚子電鉄は過疎化による人口減少や、観光客の減少により年々乗客数が減り、行政からの補助金で何とか運行を維持している状態でした。
何とかしなければならない…
出来る事といえば、数年前より製造・販売を開始した副業の「ぬれ煎餅」を売ることだけでした。
電車を走らせる為に、「買って下さい、買って下さい。」来る日も来る日も必死になって売り歩きましたが、そう簡単に売れるものではありません。現実の厳しさを思い知らされました。
「本当にこんなことに意味があるのか?」「私達が思うほどに銚子電鉄は必要とされてないのか?」
そんな思いが頭をよぎり、やる気を失いかけていました。
もうダメかと諦めかけていたある日の朝、パソコンを開くと、膨大な数のメールが2,000…3,000件…!
「ぬれ煎餅」のご注文が今までに見たことがないようなペースで入り続けていました。
一瞬、わが目を疑いました。一体これはどういうことなのだろう…?

実は3日前の夜、「もはや残された時間はあと数日、このままでは完全に資金ショートを起こしてしまう。何かしなければ。」・・そう思った時にふと思いついたのが、インターネットでぬれ煎餅の購入を呼びかけることでした。

「ぬれ煎餅を買って下さい。電車修理代を稼がなくちゃいけないんです。」

という言葉が自然と頭に浮かび、思わずホームページに書き込みをしたのです。

この書き込みを見た多くの人がインターネットの掲示板やブログ(日記)などで、「ぬれ煎餅の購入」を呼び掛けてくれたためでした。

そのメッセージに10日間で10,000人以上のお客様が共感してくれたのです。

その後テレビなどにも取り上げられ、ぬれ煎餅は爆発的な売上げを記録しました。

この売上げにより「車輌の法定検査」や「老朽化施設の改修」などの費用を賄うことができました。

これはまさに思いもよらぬ「奇跡」でした。

「銚子電鉄公式HP」より一部抜粋

 銚子電鉄のぬれ煎餅は、SOSを出した銚子電鉄の職員の投稿を発見した鉄道ファンがSNSで拡散し、一気に広まりました。

 鉄道会社の公認のお立ち台を設置することによって、鉄道ファンがその撮影地に集まります。駅のホーム端にあるお立ち台に行くためには列車に乗らなければなりません。この過程で、時には沿線に寄り道したりするなどして、鉄道ファンにSNSを使って沿線の魅力を拡散してもらう、これで鉄道ファン以外の人にも目につく可能性があるかもしれません。本来は鉄道ファンのマナーを是正するためにマナー講習を実施したり、お立ち台を設けるなどしていますが、これは鉄道ファンによって鉄道会社の魅力を拡散してもらうという一石二鳥の施策とも言えます。


↑小湊鉄道


↑ホーム端にお立ち台が設置されている滝沢駅

②鉄道ファンがとるべきこと

 我々鉄道ファンにできることは、マナーを守ることを徹底する、これに尽きます。これは鉄道ファンのモラルの問題なので具体的な対策の講じようがありません。ただ鉄道ファン全員が、人様の迷惑になっていないだろうか?と改めて考えてみることが大切だと思います。マナー問題が一向に解決しないのは、自分は関係ないと考えている人が多いからだと思います。自分は知らず知らずのうちにマナー違反を犯しているかもしれません。1人でもマナーを減らす意識を持つことが、鉄道ファンのイメージ向上への一歩につながります。

6.終わりに

 今回はテーマがテーマなだけあって、正直あまり説得力のない研究になってしまったと反省しています。ただ鉄道ファンのマナーの改善は急務の課題です。1人でも多くの人がマナーを守ることを願っています。

 さて、次は最後の研究です。テーマはすでに決めています!!最後にふさわしい研究となるよう尽力しますので、今後ともよろしくお願いします。

最後までお読みいただきありがとうございました。

7.参考サイト

・J-CASTニュース

https://www.j-cast.com/

・現代ビジネス

https://gendai.ismedia.jp/

・産経新聞ニュース

https://www.sankei.com/west/news/

・いすみ鉄道 前社長 鳥塚亮のブログ

https://www.torizuka.club/

・「プロの写真家が教える 鉄道写真の基本マナーアップ写真教室@真岡鐵道」発売!

https://www.nta.co.jp/news/2017/

・AERA dot. (アエラドット)

https://dot.asahi.com/

・ライブドアニュース

http://news.livedoor.com/

・銚子電気鉄道株式会社

http://www.choshi-dentetsu.jp/

※おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました※

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