1.はじめに
中学3年の**です。今回は北海道特急のことについて書いていきたいと思います。 北海道新幹線が2016年の3月に開業したため、北海道に足を運ぶ日本人・外国人旅行者が増えつつあります。しかし本州と北海道の旅客輸送は飛行機が、道内輸送は高速バスが主流となっており、鉄道輸送は二番手に回っています。また2013年の7月に起きた特急北斗のエンジントラブルによる火災事故などによって、バスなどの交通機関に利用者を奪われています。今回はそんな厳しい状況を強いられている北海道特急にスポットライトを当てていきたいと思います。
2.北海道特急の概略と問題点
北海道には臨時列車を除き11の特急があります。
上の表のように北海道を走る特急の種類のうち8割以上が気動車特急になっています。電化されている区間がJR北海道では少ないためです。またキハ261系、キハ281系、キハ283系では車体傾斜式車両、通称振り子式と呼ばれるシステムを導入し速達化を図っています。
しかしサロベツや新設された大雪は、今年度の改正で札幌発から旭川発に変更になっています。また今後老朽化のためキハ183系と785系は順次新型車に置き換えられていく予定です。
上の図は北海道を走る特急の路線図です。灰色の区間は特急列車が走っている中で電化されている路線、黒色の区間は特急が走っているものの電化されていない区間です。前述したとおり北海道の特急の約8割が気動車特急で、またJR北海道全体では電化率は20.62%と非常に低い数字となっています。この数値の背景にはJR北海道の厳しい経営状況があります。
北海道は豪雪地帯であるため送電設備や架線が雪の被害を受ける可能性があることや、地形的に架線の設置が困難な場所があること、そしてJR北海道の所有車両数があまり多くないのに対し路線長は長いことなどといった理由から、電化設備費が現状の気動車の燃料費よりも高額になってしまうというのが電化率の低さの背景として挙げられます。
上の表は2015年度の北海道特急の区間別の利用者数と乗車率を示したものです。(なお、列車名は一部現行のものに修正しています。)輸送量4000という値は採算性などの基準値になっており、輸送量4000以上の区間は東室蘭~札幌~旭川の区間だけとなっています。そのため輸送量4000を割っている区間は何らかの対策を講じる必要があります。
3.問題点
Ⅰ乗車率
2章でも説明した通り、乗車率は北海道特急にとって非常に大きな問題です。特に輸送力1000を割っている特急や乗車率が50%以下の特急については減便や廃止を検討せざるを得ません。
Ⅱ車両の老朽化
JR北海道が使用している車両は、雪のために老朽化が早く、車両を比較的早く置き換えなければなりません。例を挙げると大雪やオホーツク、北斗で使用しているキハ183系の一部は国鉄時代に製造された車両で置き換えが必要です。またカムイやすずらんで使用されている785系も引退が発表されました。このようにJR北海道は車両の老朽化という深刻な問題を抱えています。
▲カムイやすずらんで使用されている785系。
1990年から使用されている
▲ 大雪やオホーツクで使用されている
キハ183系
Ⅲバスとの競争
各項目で優れている方を網掛けとしました。
※1札幌直行便の宗谷は1往復 ※2札幌直通便のオホーツクは2往復
函館、東室蘭、釧路、帯広や旭川からの札幌への輸送は、特急列車のほうが一時間ほど早いため速達性では特急列車の勝ちといえるでしょう。しかし旭川や釧路などバスの方が本数の多い場合もあり、速達性をとるなら特急、本数や金額をとるのならバスという結果になります。稚内や網走など、特急とバスとの差が1時間もない場合だと、やはり金額の安いバスを選ぶ方が最善と考えられます。列車輸送の長所である長距離輸送をJR北海道は生かしきれていないといえます。
4.改善策
3章で提示した中で、対策が必要だと思われる特急は、すずらん、オホーツク・大雪、宗谷・サロベツの5つの特急です。
Ⅰオホーツク・大雪
オホーツクは札幌~旭川駅間は函館本線を、旭川~網走駅間は石北本線を走ります。現在石北本線には特急オホーツク・大雪、特別快速きたみと普通列車が運行されています。
上の時刻表は石北本線の下りの現行のダイヤです。また都合により一部普通列車と駅を割愛しています。
優等列車は札幌発の網走行特急オホーツクが2本、旭川発の網走行特急大雪が2本、旭川発北見行特別快速きたみが1本で、特別快速は北見駅で普通列車に接続しています。改善策としては現行の特急大雪の時間に特別快速きたみを運行させ、北見駅で普通網走行に接続をとるという形に変えるものです。またこの特別快速きたみは旭川駅で特急カムイかライラックと接続します。その改善ダイヤがこちらです。
こうすることで大雪用のキハ183系を減便させ、老朽化したキハ183系を廃車にすることができます。また輸送量の少ない旭川~網走駅間を普通と特別快速で運行することで、特急を運行するよりもコストを抑えることができます。ですが特別快速きたみはキハ54系1両(繁忙期は2~3両)で走らせており、旭川と北見の都市間輸送列車のため、繁忙期は満員になることが多々あります。そのため特急大雪を臨時で走らせることや臨時で編成を増結することが必要になります。
▲特別快速きたみで使用されているキハ54系。所属は旭川運輸区になっている
▲キハ54系の内装。使用車両の一部には簡易 リクライニングシートが設置されているため、 他の普通列車と比べ内装のグレードは高い
Ⅱ特急宗谷・サロベツ
宗谷本線では稚内駅と札幌駅を結ぶ特急宗谷が1往復、稚内駅と旭川駅を結ぶ特急サロベツが2往復走っています。またサロベツは旭川駅で札幌発着の特急ライラックに接続します。しかしこの列車は、表2のように乗車率や輸送量が少ないことが問題として挙げられます。さらに特急宗谷・サロベツは高速バスより本数が少なく値段も高いため、乗車率や輸送量が減少していくと考えられます。
また使用車両であるキハ261系の本数が十分でないため、機器に不具合があると予備車がないためほかの車両で代走するということが宗谷・サロベツではよく見受けられます。一時は特急用の予備車がないため普通列車用の車両で代走するという事態もありました。このような事態はJR北海道のサービスの低下を露呈してしまうことになり、対策を打つ必要があります。
▲特急宗谷・サロベツで使用されているキハ261系0番台。苗穂運転所に全14両が所属し、
通常は4両編成、繁忙期は6両編成になり、最大3編成で運行されている
しかしこの特急宗谷・サロベツには減便するにもできない理由があります。現在稚内発の列車は一日に普通列車が4本、特急列車3本となっており、特急を減便すると宗谷本線の音威子府以北の列車が少なくなってしまうため廃止にはできないのが現状です。ただ2016年のデータで宗谷本線は総額で44億円の赤字運営を強いられており、今後特に赤字額がひどい名寄~稚内駅間が廃止になる可能性もあり、JR北海道の経営判断が問われるところです。
また車両不足の問題ですが、JR北海道は特急北斗で使用しているキハ183系をキハ261系1000番台で置き換えると発表し、置き換えで余剰となったキハ183系の一部をサロベツ用に回すことで、代走などの事態を避けることができると考えます。
Ⅲすずらん
すずらんは室蘭駅と札幌駅を結び、主に室蘭~札幌間の都市間輸送の役割を果たしています。室蘭付近は比較的住宅街が広がっているため、札幌へ通勤する人の重要な交通手段となっています。またすずらんは本数が少ない東室蘭~室蘭駅間は普通として運転されています。 先ほど申し上げた通り、この特急すずらんは札幌への通勤客が多数利用しています。そのため改善案としては、朝のラッシュ時の室蘭発札幌行の列車と夕方のラッシュ時の札幌発の列車を増発し、日中のすずらんを廃止するのが最善と考えます。 さらに特急すずらんは東室蘭~札幌間は特急北斗・スーパー北斗と同じ区間を走っており、特急北斗が混雑する時期は、北斗が積み残した乗客を運ぶという役割も担っています。そのため繁忙期は臨時で東室蘭発着のすずらんを設定するのが改善策です。
5.おわりに
いかがでしょうか。JR北海道は現在非常に厳しい経営状況で、この先宗谷本線などの赤字路線を廃止や縮小していくことが予想されます。この先北海道での鉄道輸送はさらに厳しいものになると考えられます。北海道新幹線が開業すればJR北海道の復活の兆しが見えてくるかもしれません。一日も長く北海道に特急が走りつつづけ、道民の足として利用されることを願うばかりです。
6.参考文献
・都道府県別電化率・電化種類別距離一覧
http://deadsection.image.coocan.jp/dead_sec/electrify.htm
・タビリス JR北海道の特急利用者数ランキング http://tabiris.com/archives/jr-hokkaido-13/
・東洋経済 北海道「JR特急vs高速バス」の仁義なき戦い http://toyokeizai.net/articles/-/170888
(中3 HR)
この記事は2017年発行の『停車場』113号に掲載されたものです。情報が古い場合があります。
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