1.はじめに
こんにちは。中学3年の○○と申します。昨年(注.2020年)の11月に1年ぶりに日帰りの鉄道旅行をしました。なかなか旅行の出来ない情勢が続いていましたが、やはり旅は楽しいですね。そのとき初めて竜ヶ崎線に乗車したのですが、短くて不思議な路線だと感じました。今回はそんな「竜ヶ崎線」について書きたいと思います。最後まで読んでいただければ幸いです。
おことわり:以下の文章は「竜ヶ崎」「龍ケ崎」など異なる表記を用いていますが、駅名・市名共にそれぞれの正式名称に則っています。
2.竜ヶ崎線とは?
竜ヶ崎線は、茨城県南部の龍ケ崎市に位置する佐貫駅から、同市の竜ヶ崎駅までを結ぶ全長約4.5kmの単線非電化路線です。常磐線と乗り換えられる佐貫駅と市役所のある龍ケ崎市中心部を結んでいます。短い路線であり、交換駅もないことから、気動車一両が路線を往復するピストン運行が行われています。また路線が短いので営業費用が少額で済み、龍ケ崎市は東京都市圏であり、かつ比較的宅地化の進んでいる地域のため、非電化の私鉄でありながら黒字を保っています。
近年、龍ケ崎市の名物であるコロッケによる町おこしの一環として、龍ケ崎コロッケの割引券付きのフリー切符を発売したり、つり革にコロッケの食品サンプルをあしらったりなど、観光面にも力を入れています。
図1 路線図
図2 竜ヶ崎線のキハ2000型
図3 コロッケ吊革
3.竜ヶ崎線の課題
・利用者の少なさ
竜ヶ崎線は4.5㎞と短く、幹線鉄道の駅と市の中心地や住宅地を結ぶ(このような路線をフィーダー路線といいます。鉄道ではかつての「市電」などがありましたが、現在では鉄道のフィーダー路線が減少し、珍しい存在となっています。)という性格上、自転車などの他の交通手段と競合しやすいです(竜ヶ崎駅が最寄りの流通経済大学という大学がありますが、JRの龍ケ崎市駅からシャトルバスが頻繁に運行されておりこの大学の通学需要は開拓できません)。市郊外のニュータウンへ続く関東鉄道のバス路線はほとんどJRの龍ケ崎市駅が始発で、竜ヶ崎駅から徒歩圏でもない限り竜ヶ崎線を使うメリットが薄いことも挙げられます。
また短い路線のため定期料金がJRと比べて高額で、これも利用者の減少を招く一因であると考えます。
図4 竜ヶ崎線と常磐線の通勤定期金額の比較
・運行本数の少なさ
また龍ケ崎市が実施した、竜ヶ崎線への課題と要望のアンケートによると、「運行本数の少なさ」が一番に上がっていました。単線かつピストン輸送であるため、運行本数が限られていることが課題でしょう。例えば竜ヶ崎駅では平日・土休日共に毎時2~3本ほど佐貫方面への本数が確保されていますが、20時台には列車間に44分間隔が開いていたりするなど、間隔が開きすぎている時間帯も存在します(とはいえ、単線の路線で毎時2~3本という本数は決して少なくなく、全国的に見るとむしろ多い方です。仙山線や相模線、奈良線など大都市近郊の路線などを除く大多数の地方ローカル線は、竜ヶ崎線や大都市近郊の路線のように本数が毎時コンスタントに確保されているわけではありません。)。
・常磐線との乗り継ぎの問題
佐貫駅で接続する常磐線とは終電時刻が大きく異なり、龍ケ崎市中心部への利便性が損なわれています。佐貫駅を発車する竜ヶ崎方面への列車の終電(平日)は23時20分で、それ以降に龍ケ崎市駅に到着する常磐線の列車(特急含む)は4本もあり、それらの列車から龍ケ崎市中心部へのアクセスが悪くなっています。
4.考察
・利用者の少なさ
利用者を増やすため、竜ヶ崎線の延長上に位置する、市の東部や周辺自治体の河内町へのアクセスを強化すべきであると思います。現状竜ヶ崎駅から河内町方面に走っているバス路線は河内町コミュニティバスしかなく、本数も上下合わせて1日7本と少ないです。竜ヶ崎駅に駐車場を整備し、駐車場に車を駐車、鉄道を利用して通勤するというパークアンドライドという方式もありますが、竜ヶ崎線の路線距離は短く、竜ヶ崎線を利用せず車で龍ケ崎市駅まで行ってしまうことが予想されるので、ここでは不適当であると考えました。また龍ケ崎市南部に位置する利根町は、竜ヶ崎駅より近隣に成田線我孫子支線の布佐駅があるため、利根町から東京方面への通勤需要は見込めません。
図5 河内町より竜ヶ崎駅への交通ルートを確保し、東京方面への通勤需要を獲得する
距離に比して定期料金が高いという問題に対しては、市が関東鉄道あるいは利用者に補助をして定期料金を安くすべきだと考えます。竜ヶ崎線は他の多くの私鉄と異なり龍ケ崎市内で完結しているため、補助も容易です。
また新型コロナウイルスの流行に伴うテレワークの普及などによって、都心から郊外へと転出する流れもできているので、龍ケ崎市が転入先の候補にされるようなアピールが必要だと思います。
・運行本数の少なさ
以前は入地駅に交換設備があり列車交換が可能でしたが、保安コストの削減のために撤去されました。交換設備のスペースは現在も残っており、物理的に復活は可能です。龍ケ崎市の実施したアンケートでは本数の少なさを一番の課題に挙げる人が多く、路線的には黒字であるので、復活も検討するべきだと思います。交換設備を撤去したことにより全線一閉塞になってしまったため、交換設備の復活をしなければ現行の20分間隔より本数を増やすことは不可能です。
図6 入地駅の交換設備跡 雑草が生えている場所に存在
・常磐線への乗り継ぎの問題
常磐線上野方面から来る終電が龍ヶ崎市駅を発車する時刻は0時30分ですが、佐貫駅を発車する竜ヶ崎線の最終列車は23時20分と常磐線より一時間以上早く発車します。しかし新型コロナウイルスの影響による深夜帰宅の減少により、この問題点については解決の必要は薄いと思います。2020年度に龍ケ崎市は、竜ヶ崎線最終の発車後に運行する深夜バスの実証実験を行いましたが、費用対効果が薄く運行の必要性が見込めないことが実証されました。需要からして既存のタクシーなどで十分でしょう。
5.改善策
前項で書いた考察を基に改善策をまとめます。
・利用者の少なさ→河内町方面へのバス増便&定期料金の助成
・運行本数の少なさ→交換設備の復活を検討
・常磐線への乗り継ぎの問題→需要が低下しており改善の必要性薄
6.改善策の妥当性
・河内町方面へのバス増便
河内町コミュニティバスの終点は、竜ヶ崎駅の北に位置する龍ケ崎済生会病院です。従ってこのバスは通勤路線としての性格よりも、「車を運転できない高齢者が通院するための路線」という性格が強いです。つまり、本数を増やしたところでバスの乗客は竜ヶ崎線に乗車することはありません。通院する高齢者の需要があるかはともかく、増便をして竜ヶ崎線の利用者が増加するかどうかには疑問符が付きます。この改善策は妥当ではないと考えるべきでしょう。
・定期料金の助成
少子高齢化対策として進学などによる若者の転出を防ぐため、自治体が交通費を市内在住の学生に助成する取組みが近年広がっています。茨城県内でも、石岡市や高萩市など多くの市町村で実施されているようです。転出防止という効果だけではなく、交通費助成による転入の増加を狙えます。
関東鉄道に助成して定期料金の値下げをしてもらうか、利用者に直接助成するのか、という問題ですが、筆者は関東鉄道に助成することが「竜ヶ崎線の利用者増加」という目的に合致していると思います。他の市が行っているように利用者(市民)に直接助成すると市外在住者には恩恵がありませんが、関東鉄道が値下げを行えば市外の利用者にも恩恵が行きわたるでしょう。また竜ヶ崎線は龍ケ崎市内で完結しており、関東鉄道に行った助成が全て(市内在住者・市外在住者に関わらず)龍ケ崎市のためになるというメリットもあります。当然龍ケ崎市が行う事業としてどちらが適当かということについては検討が必要でしょうが、定期料金の助成のやり方としてはこちらを推します。
・交換設備の復活
前述のように、入地駅には行き違い用のスペースがあり、交換設備の復活は物理的には可能です。もし交換設備を復活させるなら、当然かなり費用が掛かります。例えば2020年に交換設備を新しく設置した北条鉄道では、ホームや分岐器、信号システムの改修すべて合わせて約1.3億円掛かったようです。また交換設備を運用するお金や手間もかかりますし、そもそも閉塞の簡便化を目的にして交換設備を廃止したという理由、単線の路線で20分より短い間隔で運転を行うことの妥当性を鑑みると、到底交換設備の復活は不可能ということが分かります。
7.結論
・竜ヶ崎線の利用者増加のためには、定期券料金の値下げを行う必要がある。
・そのためには龍ケ崎市が関東鉄道に助成を行うことが必要で、関東鉄道側から値下げを行うことで龍ケ崎市への在住者・通勤者が増加することが期待でき、鉄道・自治体共に活性化につながる。
8.おわりに
いかがだったでしょうか。私は「路線研究を書くには、その地域の多角的な知識が必要である」ということをひどく痛感させられました。また問題点も解決の難しいものが多く、結果的に安易な発想に至ってしまうことがあったことを後悔しています。調べている中で、鉄道会社側も問題点を解決しようと努力していることを改めて理解しました。
廃止の嵐により今は珍しくなった幹線鉄道と中心市街地を結ぶフィーダー路線ですが、後世も変わらず龍ケ崎市にあり続けるといいですね。
9.参考文献・サイト
・龍ケ崎市HP https://www.city.ryugasaki.ibaraki.jp
・関東鉄道HP https://www.kantetsu.co.jp
・河内町HP http://www.town.ibaraki-kawachi.lg.jp/
・Google Map https://www.google.co.jp/maps/
・NAVITIME https://www.navitime.co.jp/
・マイナビニュース https://news.mynavi.jp/
・地理院地図(本文中の地図は、本サイトの地図を加工して作成しています)
https://maps.gsi.go.jp/
おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました。掲載されている情報は研究公開当時のものです。現在とは若干異なる場合があります。
0コメント