こんにちは。巻頭挨拶でお会いした部長です。(編者注:印刷版には最初に部長や班長による挨拶を掲載しています。)実は模型班員なので、普段研究は書かないのですが、今年で引退なので少しだけ書かせてもらうことにしました。つたない文章ですが、最後までお付き合いいただけると幸いです。
さて皆さん、「E&S方式」はご存知でしょうか。日本語に直すと「着発線荷役方式」と呼ばれるものです。この特徴を理解していただくため、まず一般的な貨物駅の構造を考えてみましょう。
通常、貨物駅は着発線と荷役線に分かれています。これは、コンテナを取り扱う貨物駅だけでなく、石油や亜鉛、石灰石等を扱う貨物駅も同様です。貨物列車が荷役(注1)を行う駅に到着する際、一般的に次の手順で行われます。
①着発線に進入する。
②本線で列車を牽引してきた機関車を切り離す。
③構内入換の専用機関車を連結する。
④荷役線に進入する。
ここで不思議に思った方もいらっしゃるかもしれません。なぜ、本線で列車を牽引してきた機関車で荷役線まで押し込まないのでしょうか。この大きな理由の一つが荷役設備の問題です。コンテナ貨物を例にとると、鉄道貨物コンテナの積み下ろしにはフォークリフトが用いられます。
本線で列車を牽引するのは一般的に電気機関車です。電気機関車の走行にはほとんどの場合、架線が必要になります。荷役線に本線の機関車で進入するためには、荷役線の線路上に架線を設置しなければならず、常に高圧電流が流れる架線はフォークリフトでの荷役の妨げになってしまうのです。
本題へ移りましょう。「E&S方式」とは、日本語の通り、着発線にコンテナホームを設置して荷役を行うことです。荷役中は着発線上の架線への送電を停止し、E&S方式対応のフォークリフトを用いることで、非通電状態の架線を傷つけずに荷役を行うことが出来るようになりました。こうすることで、貨物駅に到着してすぐに荷役を行うことができますし、荷役終了後にすぐに発車することが出来ます。結果、所要時間短縮という大きなメリットが得られるのです。
また、従来必要な入換用の専用機関車も用意する必要がないため、必要な整備コストを削減することができるのです。
通販事業の拡大やコロナ禍、モーダルシフトなどによって、貨物取扱量が増加する中、事業を拡大・維持するためには「コスト削減」・「所要時間短縮」は急務です。
JR貨物はこの「E&S方式」を積極的に多くの駅に導入してきました。最近では、横浜羽沢駅にも導入しています。今後も、取扱量の多い駅から導入していくとしており、顧客からも高い評価を受けている他、新たな顧客の獲得にも繋がっています。
以下注
注1荷役 貨物輸送の過程で、貨物の積み下ろしを行うこと。
参考文献
・松永和生(2008)「JR貨物の中長期計画からみた輸送効率化についての一考察」『交通学研究』2008年研究年報、pp.81-90
https://www.jstage.jst.go.jp/article/koutsugakkai/52/0/52_81/_pdf
・JR貨物HP
https://www.jrfreight.co.jp
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