湘南ライナーの特急格上げについて

1.はじめに

 みなさん初めまして。中学2年の〇〇と申します。初めて書く研究となるので、分かりにくいなど未熟なところが多々あるかと思いますが、最後まで見ていただければ幸いです。今回の研究では、一部の鉄道ファンの中で噂されている東海道線「湘南ライナー」の特急「おだわら」への格上げについて考察していきます。

2.湘南ライナーについて

(1)概要

 湘南ライナーは、東京・品川駅⇔小田原駅で運行されているライナー列車です。朝夕のラッシュ時に運行されており、主に上り線は貨物線経由、下り線は旅客線経由で運行される列車が多くなっています。また、同時間帯に新宿方面へおはようライナー新宿、ホームライナー小田原も運転されています。使用車両は特急踊り子に使用されている185系と、ライナー用に製造された215系です。また2020年3月14日のダイヤ改正までは、特急スーパービュー踊り子に使用されていた251系も使用されていました。

湘南ライナーに使用されている185系(上)と215系(下)

(2)湘南ライナーの歴史

 湘南ライナーは、1986年(昭和61年)11月1日、宇都宮線のホームライナー大宮、総武線のホームライナー千葉に次いで3つ目のライナー列車として登場しました。料金は¥300でしたが、後に二度の値上げを行い、現在は520円となっています。また、1988年7月6日には新宿方面へと向かう湘南新宿ライナーが新設されました。なお、2002年12月1日に、上りがおはようライナー新宿、下りがホームライナー小田原に名称変更されました。  

3.特急格上げの先例

(1)ホームライナー土浦・おはようライナー土浦→フレッシュひたち(常磐線)

 これは首都圏で初めてのライナー特急格上げ例で、1998年12月8日のダイヤ改正によって行われました。格上げ当初は特急の知名度が上がらず乗車率が伸びませんでしたが、後にカラフルなE653系が話題を集め、人気となりました。なお、このフレッシュひたちは2015年3月15日の上野東京ライン開業と同時に特急「ときわ」に置き換えられ、廃止されました。

(2)ホームライナー鴻巣→スワローあかぎ(高崎線)

  2014年3月15日のダイヤ改正によって格上げが行われました。これによって料金は500円から750円と50%もの値上がりとなり、スワローサービスというスマホで指定席を予約できるサービスも開始されたものの、運行当初は乗車率が伸びませんでした。現在はある程度定着しているようです。

(3)中央ライナー・青梅ライナー→はちおうじ・おうめ(中央・青梅線)

 2019年3月16日のダイヤ改正によって格上げが行われました。これによって料金は310円から750円への142%もの大幅値上げとなりました。これにより利用客の多くは¥300の拝島ライナー(西武新宿駅→拝島駅)や410円の京王ライナー(京王八王子・橋本駅→新宿駅)へと流れ、利用客は激減しました。しかし、高額な料金によって乗客が60%減っても元を取れる計算であるため、JRとしては増収となる可能性もあるため格上げされたものと思われます。

4.湘南ライナー特急格上げの根拠

(1)「おだわら」登録商標の出願

 湘南ライナーが特急に格上げされるという噂の根拠の一つとして、2018年9月にJR東日本が特許庁に「はちおうじ」「おうめ」「富士回遊」「サフィール踊り子」「おだわら」の五つを登録商標として出願したということがあります(「富士回遊」「サフィール踊り子」のみ認可、それ以外は却下)。このうち「おだわら」以外の四つはすでに特急として運行を開始しています。残る「おだわら」は、前述した「はちおうじ」「おうめ」と行先をひらがな表記しているという点で共通しており、よってライナー列車を格上げした特急名との見方が広がっています。

(2)「特急 ひらつか」幕の表示

 最後に、そのE257系2000番台が2020年1月31日の試運転の際、総武線内で行先表示器に「特急 ひらつか 東京行き」と表示していたことが挙げられます。こちらも(1)と同様の理由でライナー格上げ後の特急名とみられており、「おだわら」と同時に運行がされるではないかと思われています。

(3)ライナー使用車両の老朽化と置き換え

 次に、185系の老朽化により、2020年3月14日のダイヤ改正以降、特急踊り子185系のE257系2000番台による置き換えが行われていることがあります。この車両には改造前にはなかったスワローランプが取り付けられており、これはこの車両を全席指定として運用できるようにするものです。しかし、踊り子号の修善寺方面は伊豆箱根鉄道線内で特急料金を取っていないため、現状では踊り子号のスワロー化することは難しくなっています。そのため、全席指定はライナー列車の後継車両になると考えられます。また、215系も老朽化が進んでいるうえ、2ドアで乗降に時間がかかるためライナー列車と中央線の臨時列車ホリデー快速ビューやまなしに使われる程度で使用効率が悪いほか、ボックスシートで乗り心地が悪いことから近いうちの置き換えが予想されます。

185系を置き換えているE257系2000番台

 以上の根拠より、湘南ライナー・おはようライナー新宿は特急おだわら・ひらつかに格上げされる可能性が高くなっています。いずれも状況証拠ではありますが、後述するJR側のメリットを考えれば、格上げが現実的になってきそうです。

5.格上げのメリット・デメリット

(1)JRのメリット

 ・料金の実質値上げによる収益の増加

 ・車内改札の簡略化による車掌の減員→人件費の削減

・大船駅以西での「タダ乗り」防止  など

※タダ乗りとは、ライナーの下りの大船駅以西ではライナー券が買えず、車内改札も間に合わないことを利用してライナー券を購入せずにライナーに乗車する不正乗車のことです。2014年に大船駅以西のライナーが快速扱いとなり、正式に認められました。

(2)利用者のメリット

 ・コンセントの設置やリクライニングなどのサービス向上

 ・スワローランプの設置による車内改札の省略  など

(3)JRのデメリット

 ・料金値上げによる小田急線・新幹線への利用客流出

・沿線自治体からの抗議  など

(4)利用者のデメリット

・料金の実質値上げによる負担増  など

6.格上げの是非

 以上に挙げたことより、湘南ライナーの特急格上げは行うべきかを考えていきます。まず結論から言いますと、格上げは行うべきであると考えます。その理由と具体的な対応について述べていきます。

(1)格上げをすべきである理由

まず、湘南ライナーの特急格上げをすべきであると考えた理由について述べていきます。まずJRのメリットで述べた「車掌の減員による人件費の削減」についてです。昔からJRに限らず、鉄道会社では収支に対して人件費の割合が高すぎることが問題になっていました。JR北海道のデータを例に挙げます。

図のように、JR北海道の支出のうち人件費が3割超を占めています。これはほかの鉄道会社にも当てはまることであり、各鉄道会社は人件費の削減が喫緊の課題となっています。湘南ライナーの特急格上げを行えば、車内改札が省略されることにより車掌の減員が可能となるため、人件費の削減が可能になります。それにより収益の増加が見込まれるので、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で収益が落ち込む今こそ、湘南ライナーの特急化は必要と考えます。

(2)利用客の引止めのための対策

 JRのデメリットで述べたように、特急化により利用客が他路線に流れることが懸念されます。それを引き留めるための対策を考えていきます。

①特急料金の特例

 対策の一つとして、特急料金に特例をつけることが考えられます。

※グリーン券や特急券を車内で購入した場合、駅などで事前に購入した場合と比べ料金が高くなる。

 上の図の対象は全車指定席特急であるため、おだわら・ひらつかも同じ特急料金が適用されると考えられます。この時、東京・新宿駅⇔藤沢駅では営業キロが50km超となるため、料金が現在のライナー料金から¥500も値上げされ、ほぼ2倍となります。そのため、利用者が小田急線などに流れてしまうことは避けられません。これを避けるための案として、JR東日本利用客数TOP100(2019年度)にランクインしている東京・新宿駅⇔大船~平塚駅の料金を50km以内の料金に準じさせることが挙げられます。これによりライナーからの値上げは¥240に抑えられるため、ライナーの利用客の流出を一定程度抑えることが期待されます。

②定期券への対応

 2つ目に、グリーン定期券のように特急に対応した定期券を発行することが挙げられます。現在のライナーや特急はそれに対応した定期券がなく、別途特急券やライナー券を購入する必要があります(ライナーのグリーン車に乗る場合はグリーン定期が利用可能)。この煩わしさを解消するため、特急に対応した定期券を発行することが考えられます。また、毎回特急券を買う場合より値下げをすることにより、さらなる利用の促進につながります。

 以上のような対策を取ることにより、JRにとっては利用者の他路線への流出を最小限に抑えられ、値上げや先述した人件費の削減などを考えれば増収になると思われます。また、利用者にとっても最小限の値上げで以前より乗り心地の良い特急車両で座って通勤できるなど、双方がメリットを受けることができます。

7.おわりに

 いかがだったでしょうか。初研究ながら何とか目標にしていた3,000字は超えられたものの、浅く広い・写真が少ないなど、まだまだ改善の余地がありそうだと感じました。次の研究では、もっと一つのことを深く掘り下げるような形にできればと思っています。

 ここまで原稿を書いたところで、JR東日本より2021年春に特急踊り子をスワロー化するとともに、湘南ライナー・おはようライナー新宿・ホームライナー小田原を廃止し、特急「湘南」に置き換えると発表がありました。

特急「湘南」のポスター

この特急で私が述べたような通勤客優遇の策が取られることを願って、この研究を終わらせていただきます。このような拙い文章を最後まで読んでくださった読者の皆様

本当にありがとうございました!

8.参考資料

・読売新聞オンライン

https://www.yomiuri.co.jp/

・乗り物ニュース

https://trafficnews.jp/

・マイナビニュース

https://news.mynavi.jp/

・旅行総合研究所タビリス

 https://tabiris.com/

・ねとらぼ交通課

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/subtop/norimono/

おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました。掲載されている情報は研究公開当時のものです。現在とは若干異なる場合があります。

浅野学園鉃道研究部 『停車場』アーカイブ

浅野学園の鉃道研究部が発行する部誌『停車場』のアーカイブサイトです。過去に発行された『停車場』を自由に閲覧することが出来ます。

0コメント

  • 1000 / 1000