東京メトロ東西線の改良工事

1.はじめに

 中学生の間ぼーっと過ごしていたら、いつの間にか浅野学園での生活が半分終わってしまっていました。残りの時間を有意義に過ごしたいともあまり思っていませんが、勉強はしっかりできるようにしたいと思います。

 さて、今回は東京メトロ東西線で行われている改良工事について触れたいと思います。全国最高の混雑率を誇る東西線の今後について研究していきます。

2.東京メトロ東西線について

 東京メトロ東西線は、東京都中野区に位置する中野駅から、千葉県船橋市に位置する西船橋駅まで、全長30.8kmを結ぶ東京地下鉄の路線です。

<東京メトロ東西線の概要>

(駅名は一部のみ表示)

 東西線は、快速運転実施による千葉県から都心への所要時間短縮や、並行して走るJR中央線、総武線の混雑緩和を目的として建設されました。JRでは向かいづらい都心部へ直結することが東西線の強みであり、非常に多くの利用があります。また、速達性を高めるため快速や、通勤快速といった速達性を持った種別が運行されています。

 また中野駅からはJR中央線各駅停車、西船橋駅からは東葉高速鉄道、朝夕のみJR総武線各駅停車と直通運転をしています。

3.東西線の現状

 以上のような経緯で建設された東京メトロ東西線ですが、この路線は、長年にわたって朝の激しい混雑に悩まされてきました。

 1990年頃は、東西線以外の首都圏の路線にも混雑率が200%を超えている路線が多く、東西線も同様の水準でした。しかし、ほかの路線が輸送力増強によって混雑率を下げ、主要区間の平均混雑率が163%(2019年度)まで低下した一方で、東西線は混雑率が下がらないまま、現在は混雑率199%(2019年度)と、日本の鉄道路線で最も高い数値となっています。

 また、混雑が激しい影響で、東西線では遅延が非常に多く発生しています。2018年度の平日20日間あたりの遅延証明書発行日数は18.0日という数値で、平日の約9割で5分以上の遅延が発生しているということになります。このように、東西線では朝ラッシュ時間帯に、慢性的な激しい混雑、頻繁な遅延が発生しています。

4.東西線の改良工事とその効果

 前章に挙げたように、東西線には、主に朝ラッシュ時間帯において多くの問題点があります。そのため、東西線では2027年度までにかけて、朝ラッシュ時間帯を主眼に置いた大規模な改良工事が行われています。今回東西線で行われている工事は、主に以下の2つです。


① 南砂町駅のホーム新設・増線

② 九段下駅~飯田橋駅の引き上げ線改良


① 南砂町駅のホーム新設・増線

 この工事は、現在島式1面となっている南砂町駅のホームの南側に新たにホームを新設し、現在のホームの幅を広げ、さらに南側に線路を増設する、というものです。

 この工事が完了すると、これまで狭いホーム1面で上下線の列車の乗客をさばいていたのが、上下線別々の広いホームで乗客をさばけるようになります。これにより、南砂町駅における乗降にかかる時間が減少し、遅延リスクの低減、所要時間の短縮が図られます。また、現在両方向1線ずつの計2線となっている線路が3線に増やされ、上り線または下り線のどちらか一方において、本線と待避線を交互に発着する、交互発着が行えるようになります。交互発着を行うと、先行列車が駅で停車している間に、後続の列車がホームに進入することができます。


 これによって、南砂町駅において、列車の間隔を広げることなく列車の停車時間をより多く確保できるようになります。南砂町駅で停車時間を多く確保できると、それより手前の区間で発生した数十秒程度の小規模な遅延をこの駅で吸収できるようになり、遅延リスクの低減が図られます。

② 九段下駅~飯田橋駅の引き上げ線改良

 この工事は、九段下駅の先にある引き上げ線とその付近の配線を改良するものです。

▲九段下駅付近の配線改良前後の配線図。(左が改良前、右が改良後)

 現在、九段下駅の先には上の図のように、上り線の南側に引き上げ線が設置されています。九段下駅止まりの列車がここから折り返す際、上り線の進路を妨害して下り線に向かう必要があります。これがネックとなり、今までこの引き上げ線は有効に活用されてきませんでした。

 今回の工事では、現在引き上げ線となっている線路が上り線、現在上り線となっている線路が引き上げ線となるように配線が改良されます。これによって、折り返し列車が上り線の進路を妨害することなく下り線に進入できるようになるため、九段下駅止まりの列車を設定しやすくなります。これまで、中野駅まで運行する必要があった車両を九段下駅までの運行に短縮し、車両数に余裕を持たせることで、主に朝ラッシュ時間帯において列車の増発が可能となります。また、ダイヤ乱れ時などにこの引き上げ線をより有効に活用することができるようになります。

 このほかにも、木場駅のホーム幅を広げる工事や、茅場町駅のホーム延伸、日比谷線との乗り換え通路増設などといった工事も行われており、駅構内の混雑緩和による列車の乗降時間の短縮が期待されています。

 これらの工事を行うことで、東京メトロでは、東西線の朝ラッシュ時混雑率を、現在の199%から180%以下に減少させることを目標としています。

5.東西線の改良工事の問題点

 このように、東西線の大幅改善が見込まれる今回の改良工事ですが、問題として、改良工事完了後も列車の増発をするのが難しいことが挙げられます。

 現在、東西線では、最ピーク時間帯には、7分に3本、約2分20秒間隔で列車が発着しています。列車の増発を考えるとき、必然的にこの間隔を縮める必要があります。一方、複線である東西線は、どれだけ列車を増発できたとしても1時間に30本、約2分間隔にしかできません。さらに、乗客の乗降に時間がかかる朝ラッシュ時にはさらに列車間隔を広げる必要があります。そのため、東西線ではすでに限界に近い本数が運転されているのです。大幅な増発はできないといえるでしょう。東西線沿線の多くの自治体では2030年ごろまで人口が増加することが予想されており、その後の人口の減少幅も小さいと見込まれています。激しい混雑を打開する抜本的な対策は打てないというのが問題点といえます。

6.解決策

 まず、混雑率の面についてですが、東西線への直接のテコ入れはこれ以上できないと考えます。列車を増発することを考えた場合、最も有効な方法は複々線化です。しかし、複々線化を行う場合、土地の確保が困難な他、建設費が多くかかりすぎること、工期が非常に長くなってしまうことなど、問題点が多いため、この方法は適していないと考えます。また、朝ラッシュピークの時間帯を避けたオフピーク通勤の推進に関しても、浦安駅から座れる始発列車を2本設定しているほか、2007年から「東西線早起きキャンペーン」、2019年から「東西線オフピークプロジェクト」などといった試みがされています。それにも関わらず、混雑率には目立った改善がみられていません。

 そこで、東西線と並行して走る、JR京葉線と都営地下鉄新宿線についてみていきたいと思います。以下の表をご覧ください。

(いずれの数値も2019年度)

 東西線の南側約2.5kmにはJR京葉線、北側約2.5kmには都営新宿線が走っており、これら2路線の混雑率は比較的低い数字となっています。そこで、これらの路線に乗客を誘導することで混雑率を低減することができます。

 また、遅延率の面については、乗客が乗降中であってもベルが鳴り終わったタイミングでドア閉めを行う、という方式を採用するべきだと思います。これは、現在東京メトロの他の路線では多く採用されている方式で、これによって遅延を抑えることができます。また、増発を行った時でも遅延リスクをあまり上昇させることがなくなるでしょう。

7.終わりに

 現在進行している事業について取り扱ったため、抜本的な解決策について触れられませんでしたが、いかがでしたか。ものすごく書きづらかったので、次回からは、まだ計画段階の事業などについて触れていきたいと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

8.参考資料

東京メトロ

https://www.tokyometro.jp/

国土交通省

https://www.mlit.go.jp/

東洋経済オンライン

https://toyokeizai.net/

浅野学園鉃道研究部 『停車場』アーカイブ

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