1.はじめに
こんにちは、高校二年の**です。このたびは「停車場」の文化祭号を手に取っていただき、ありがとうございます。「読みやすく、分かりやすく、親しみやすい」研究を書けるようがんばりますので、よろしくお願いします!
さて、突然ですが…今、関西の鉄道が“アツい”ことをご存知でしょうか?「そもそも関東の鉄道事情すらよくわからないよ…」という方も多いと思います。ですがみなさんは「関西国際空港」はご存じですよね?実は、「関西国際空港」の最寄り駅である「関西空港駅」までのアクセスが、劇的に変わるかもしれないのです。それを、世間では「なにわ筋線」構想と呼んでいます。今回はその「なにわ筋線」構想をはじめとした関西圏の鉄道の将来についてみていきたいと思います。最後までお読みいただけると幸いです。
2.そもそも“今”の鉄道網とは?
現在の鉄道網をJR線と私鉄に分けて説明していきます。
◇JR編
東京のJR線は、「山手線を中心として、各方面に放射状に路線が延びている」構図となっています。大阪のJR線も東京の鉄道網と同じ形です。大阪は、山手線の代わりに「大阪環状線」が走っており、そこから東海道線(京都線・神戸線)や大和路線、阪和線などが放射状に延びています。
以下が大阪の「JR線の路線図」です。このうち、「大阪」の路線名については研究内でたびたび出てくるので、わからなくなったらこの路線図を参考にしていただければよろしいかと思います。
◇私鉄編
次に私鉄編です。関西には6つの私鉄が存在します。以下の路線図は、大阪の私鉄の路線図の概略です。一部路線は省略しているほか、JR大阪環状線は便宜上載せております。
※大阪駅は梅田駅に、大阪阿部野橋駅は天王寺駅にまとめてあります
東京の私鉄網については詳述しないつもりですが、1つだけポイントとして押さえておいてもらいたいのは「(地下鉄は除いて)基本的に山手線の内側には乗り入れない」ということです。一方で大阪の私鉄は、さまざまな路線が「大阪環状線内にも乗り入れている」のです。大阪の中心部にダイレクトにアクセスできることから、関西の私鉄とJRはライバル状態となっています。この点についても「なにわ筋線」構想の話題の時に後述します。
ここまでは関西の鉄道網について見てきました。次のページからはいよいよ本題に入っていきます。まずは「なにわ筋線構想」について研究します。
近鉄特急21000系
京阪特急8000系
大阪メトロ御堂筋線30000系
関西私鉄の車両の一例
3.なにわ筋線構想について
「なにわ筋線構想」、それは端的に言えば「大阪のど真ん中に新たに路線を建設する」というものです。具体的な場所を示すと、「梅田(大阪駅周辺)」と「なんば(道頓堀に近い)」を結ぶ路線です。大阪は「キタ(=梅田界隈)」「ミナミ(=なんば界隈)」と呼ばれるように、梅田となんばが二大中心地となっています。現在は大阪メトロ御堂筋線が両者を結ぶメインルートとして機能していますが、なにわ筋線の開業により、新たな交通ルートが誕生するというわけです。
そして、この「なにわ筋線構想」ですが、国土交通省から2019年7月9日(火)に「なにわ筋線の鉄道事業を10日(水)付けで許可」するという発表がなされました。これは「なにわ筋線」の開業が確実となったことを意味します。なお、開業は2031年を予定しています。
ここからはなにわ筋線のルートや運行形態について説明していきます。まずは梅田に設置される駅から見ていきましょう。梅田では、JR大阪駅の北西側の地下に「北梅田駅(仮称)」が設けられます。そして北梅田駅から北は、現在地下化工事を行っている梅田貨物線に乗り入れ、「新大阪駅」につながります。新大阪駅はみなさんご存じの通り、JR東海道・山陽新幹線との乗り換え駅です。また、新大阪駅から先、京都駅方面にも乗り入れることができます。
つづいては、北梅田駅よりも南側、「なにわ筋線」のルートについて説明します。北梅田駅からは「なにわ筋」と呼ばれる道路の地下を経由して、なんば方面に向かいます。このなにわ筋という道路こそが、「なにわ筋線」の名前の由来となっています。北梅田駅となんばの間には2か所に駅が新設され、それぞれ「中之島駅」「西本町駅(仮称)」が設けられます。中之島駅は中之島と呼ばれるエリアに位置し、京阪中之島線と乗り換えられる見込みです。
そして、西本町駅の南側で「なにわ筋線」は2方面に分岐し、それぞれJR線と南海線に接続します。JR線方面は現在の「JR難波駅」にそのまま繋がります。ちなみにこの駅は「なにわ筋線」の乗り入れを想定して建設されています。そして、南海線方面は難波駅の地下に「南海新難波駅(仮称)」を設け、その後地上に上がり、新今宮駅の北側で現在の南海本線の線路と繋がります。
現在はまだ地上を走る梅田貨物線
JR難波駅のこの先が「なにわ筋線」となる
次に運行形態について説明します。「なにわ筋線」には主にJR阪和線と南海本線を走る「関西空港へのアクセスを担う列車」が乗り入れると想定されています。具体的にはJR阪和線から「特急はるか」「関空快速」が、南海本線から「特急ラピート」「空港急行」が乗り入れる予定です。また、このほかにもJR阪和線の「特急くろしお」「紀州路快速」や、南海本線の「特急サザン」も乗り入れると予定されています。これらは和歌山県へ向かうJR・南海線の優等列車です。
これらの列車や詳しい運行形態については、のちに詳述しようと思います。そして以下の路線図が「なにわ筋線」と周辺路線の路線図となっています。
ただ、現在にも関西空港と大阪中心部を路線はありますし、梅田となんばを結ぶ路線もあります。それでは、そもそもなぜ「なにわ筋線構想」が生まれたのかを次のページから考えていきます。
※「なにわ筋線」や、地名・駅名について表記がややこしいので、今回は以下のように定義します。
◇現在の関西空港からのアクセス
今回の研究では「関西空港から鉄道で大阪方面へ行く場合のアクセス」に焦点を当てます。
これは大きく分けて2つのルートがあります。1つ目はJR阪和線・関西空港線を使うルート、2つ目は南海本線・空港線を使うルートです。JRも南海もそれぞれ「特急列車」と「通勤列車」を使う方法があるので、合計4つのパターンについて紹介します。
【路線図】関西空港へアクセスする路線(和歌山駅と和歌山市駅の間はJR紀勢線で4分ほど)
次の表は関西空港アクセスを担う列車の≪料金≫と≪時間≫を比べるために表にしたものです。表の左側が≪料金≫、右側がかかる≪時間≫を示しています。
備考
・特急「はるか」は指定席利用(通常期、なお自由席の場合は-520円)、特急「ラピート」はレギュラーシート(特急「ラピート」の標準的な座席)利用した料金
・南海線を利用した場合のルートについて、難波駅まではいずれも南海線利用
「大阪まで」はなんば駅~梅田駅間で大阪メトロ御堂筋線を経由
「新大阪まで」はなんば駅~新大阪駅間で大阪メトロ御堂筋線を経由
「京都まで」はなんば駅~梅田駅間で大阪メトロ御堂筋線を、大阪駅~京都駅間でJR京都線(新快速の時間で計算)を経由
・なんばまでのアクセスは料金・時間のどちらでも南海が優位となることからJRは省略
・灰色網掛けは乗り換え回数が1回、黒網掛けは乗り換え回数が2回 (実際に移動する場合は1回の乗り換えにつき5分かかると想定し、乗り換え時間を合わせた時間を表示)
JR線と南海線の特徴を挙げましたが、ここでどこへ行くにも「乗り換えをしないといけない場合が結構多い」と思った方もいるのではないでしょうか。ただ、「1回や2回乗り換えるぐらいどうってことはない」と思われる方もいるでしょう。普通の移動においてはそこまで苦にならないと思います。ですが、今回扱っているのは「空港アクセス」です。空港から帰ってくる人、そして空港へ行く人は、ほとんどの人がキャリーケースなどの重い荷物を持ちながら移動するのではないでしょうか。重い荷物を持った状態での移動であれば、「乗り換え回数」は非常に重要なポイントとなります。回数が少なければ少ないほど乗客の利便性は高まります。
例えば、特急「はるか」の場合、他の移動手段に比べて料金がかなりかかりますが、「京都まで1本で行ける」という利便性ゆえ、繁忙期には増結されるなど、利用率はある程度高い数字を維持しています。また、近年空港アクセスにおいて大きく台頭しつつある「高速バス」も、梅田やなんば、京都などの主要観光地に直接行くことができるメリットを持っています。
つまり、「乗り換え回数を減らすこと」こそが、空港アクセスの最も改善すべき点になります。これを「なにわ筋線」が一気に解決してくれるのです。「なにわ筋線」が誕生することで、なんばに直接乗り入れることができなかったJR側も、梅田に直接乗り入れることができなかった南海側も悲願の乗り入れを達成できるほか、乗客側からも「乗り換え回数を減らすことができる」メリットが生まれます。これこそが、「なにわ筋線」開業の最大のメリットだと考えます。
では試しに、「なにわ筋線」の開通によって、所要時間はどれほどまで変わるのか、もう一度表を作ってみました。以下が、「なにわ筋線」開通後の≪時間≫の表となります。ちなみに、開業後の所要時間については公式のデータを調べたところまだ確定はしておらず、かつ停車駅設定などが曖昧なため、独自に考察した結果を載せることをご了承ください。
≪時間【なにわ筋線開業後】―なんば・梅田・新大阪駅につながった場合≫
備考
・「なんばまで」の所要時間について、JRはJR難波駅まで、南海は南海新難波駅までです。
・「梅田まで」の梅田とは、この場合いずれも北梅田駅を指します。
・「なにわ筋線」のなんば~梅田の所要時間は、特急が5分、その他が8分としました。
・乗り換えが発生する箇所は同様に網掛けを施しました。
表をご覧になればお分かりでしょうか。明らかに乗り換え回数が減少し、所要時間が短くなっていることがわかります。このように、「なにわ筋線」には多大なメリットがあることが分かります。以下に、これまで紹介したメリットも踏まえて、「なにわ筋線」のメリットをまとめました。
◇「なにわ筋線」を建設するメリット
・ (鉄道会社として)関西空港からなんばにも梅田にも直結することができる。
・ (乗客として)空港から乗り換え回数ゼロで行ける場所・選択肢が増える。
→具体的には、空港から梅田に行く際、従来では関空快速でしか直接行けなかったのが、他のどの3つの列車でも梅田に行くことができる。
→つまり、乗客の利便性が格段に向上する。
・ 併せて空港アクセスの所要時間の短縮も図ることができる。
これらはあくまでも「空港アクセス」の視点でのメリットであり、他にも
・ 「なにわ筋線」の開業により、梅田となんばを結ぶ路線が増えるため、現在も梅田となんばを結ぶ御堂筋線の混雑が緩和できる。
・ 大阪環状線では、特急「はるか」や関空快速が走らない分、線路に空きができ、
定時性も確保しやすくなる(遅延の増大が起きにくくなる)。・ 大阪府南部地域と大阪中心部のアクセスが向上する。
・ 大阪環状線内でのダイヤにゆとりが生まれ、他の路線からの直通を増やすことができる。
・ まだ開発の余地が十分ある中之島に「なにわ筋線」が乗り入れることで、
新たな開発を促進することができる。
といった様々なメリットが生まれます。
4.なにわ筋連絡線について
◇「なにわ筋線」構想はこれだけではない
近年「なにわ筋線」のほかに新たな計画が発表されたのです。それは、「阪急電鉄がなにわ筋線構想に参入する」というものです。それが「なにわ筋連絡線(以下もこう呼びます)」計画です。
◇「なにわ筋連絡線」構想とは
なにわ筋連絡線のルートは、北梅田駅を出て、阪急の十三駅を通り、新大阪駅に接続するというものです。この路線は全線が地下で建設される予定となっています。そして、北梅田駅ではなにわ筋線に乗り入れるという計画がされています。
ですが、阪急電鉄とJR西日本・南海電鉄の間には直通運転をすることが難しい大きな壁があります。それは、軌間(=線路と線路の間の幅)の長さの違いです。阪急電鉄は標準軌とよばれる幅1435mmの線路を、JRと南海は狭軌と呼ばれる幅1067mmの線路を使用しています。ですが、この軌間の違いという問題は、阪急電鉄が狭軌でなにわ筋連絡線を建設する予定であるため、解決されたといっていいでしょう。他の阪急の路線は標準軌であるため直通運転はできませんが、既存の路線に直通運転させることは難しい上に費用もかかるため、これは英断と言っていいと思います。そして、「なにわ筋連絡線」は北梅田駅から「なにわ筋線」に乗り入れる計画があるとお伝えしました。この乗り入れ計画ですが、私の推測からすると、乗り入れるのは南海電鉄系統の列車ではないかと思います。なぜなのか、次のページから理由を説明していきます。
◇南海電鉄がなにわ筋連絡線に乗り入れたほうがいい理由とは
南海が「なにわ筋連絡線」に乗り入れたほうがいい理由の1番の原因は「JR」ではないでしょうか。ここは話が少々複雑なので、流れを押さえながら説明します。
① そもそも前提として、「なにわ筋線」は梅田貨物線で、新大阪駅につながります。
② では、新大阪駅まで線路がつながるのならば、JRも南海も、関西空港駅から来た列車を新大阪駅まで走らせたいでしょう。新大阪駅は新幹線も通ることから、新大阪駅に乗り入れれば新幹線と関西空港をつなぐ重要な役割を担うことができます。
③ ですが、その新大阪駅に乗り入れるにあたって、南海は梅田貨物線ではなく、阪急の十三駅を介する「なにわ筋連絡線」を経由すべきだと考えます。なぜなら、南海は梅田貨物線経由で乗り入れるのは難しいと考えたからです。
その難しい理由とは、端的にいうと「新大阪駅の容量が限界に達すると予想されるから」です。
現在、新大阪駅には5面10線のホームが稼働しています。新大阪駅の中でも比較的発着本数が少ないおおさか東線用のホーム(3線分)で「なにわ筋線」直通の列車の発着をすると予想されます。そして、「なにわ筋線」に乗り入れる列車はかなりの本数が予想され、3つの線路でこれらすべての列車を捌くのはかなり困難だと思われます。一応、新大阪駅の西端にはホームのない線路が2本ありますが、ここは貨物列車もひっきりなしに通るので、「なにわ筋線」直通の旅客列車が折り返す余地はないと考えた方がいいでしょう。つまり、新大阪駅に来る列車が「多すぎる」ということになります。下の図は新大阪駅のホームと線路を模式的に表した図です。
現在の新大阪駅のホームの用例(※特急「はるか」「くろしお」も①~③を使用)
◆おおさか東線とは
・新大阪駅から久宝寺駅までの20.3kmからなり、城東貨物線を旅客化してできた路線です。
・普通列車のほか、朝夕は久宝寺駅から大和路線に直通する「直通快速」という列車があります。・途中駅では阪急京都本線、京阪本線、大阪メトロ今里筋線、JR学研都市線、近鉄けいはんな線、近鉄奈良線、近鉄大阪線と接続し、メガループとしての役割を担っています。
梅田貨物線はJRの路線なので、JRの列車が優先して新大阪駅に乗り入れられると考えてよいでしょう。そうなると、JRとしては南海の列車が一番「余計な」もの扱いとなります。
また、JR側としては、南海に勝るアドバンテージが欲しい、という思いがあるのではないかと考えます。少し前に現在の空港アクセスの料金を表した表を挙げましたが、その表から分かる通り、南海のほうがかなり料金が安いことがわかります。それゆえ、JRとしては「新大阪駅・京都駅にダイレクトにアクセスできるのはJRだけ」という面で南海よりも優位に立ちたいのではないでしょうか。
では一方で、南海が「なにわ筋連絡線」経由で新大阪駅に乗り入れた場合はどうでしょうか。もともとこちらはどの列車がどのくらい走るかは一切決まっていないため、南海からの列車をすべて「なにわ筋連絡線」に通すとすれば、合理的なのではないかと思います。また、「なにわ筋連絡線」を通ることで、十三駅で阪急の路線に乗り換えることができます。十三駅は阪急において重要な結節点として機能している駅です。
阪急のターミナル駅である十三駅を「なにわ筋連絡線」は通るので、南海の列車が「なにわ筋連絡線」を経由すれば、阪急沿線から関西空港へ向かう人は間違いなく南海の列車に乗車すると思われます。つまり、南海も「なにわ筋連絡線」に乗り入れることによって恩恵を受けられます。
そして、南海が乗り入れるとしたら、阪急も恩恵を受けられるでしょう。阪急としては、他社の路線が乗り入れることで、関西空港や大阪府南部とのアクセスが飛躍的に良くなります。そして、新大阪駅へのアクセスも向上します。また、標準軌の車両しか保有していない阪急としては、新たに狭軌の車両を作ることは手間と費用が掛かりますが、南海が乗り入れることによって自社車両を保有しないことも可能となります。また、直通する南海から線路使用料を得ることができるので、阪急にも恩恵があります。
今までのメリットをまとめると、
【JR西日本】
・新大阪駅の線路の容量を減らせることができる。
【南海電鉄】
・本数を削減することなく新大阪駅まで乗り入れることができる。
・阪急電鉄からの客を十三駅で一気に引き受けることができる。
【阪急電鉄】
・新大阪駅や関西空港、大阪府南部へのアクセスが向上する。
・自社の狭軌の車両を保有せずに済む。
・南海の電車が通ることにより線路使用料を得ることができる。
などが挙げられます。
一方でデメリットも挙げると、
【JR西日本】
・ライバルとなる南海も新大阪駅に乗り入れる点では同列となってしまう。
【南海電鉄】
・新大阪駅までの所要時間は伸びるほか、阪急への線路使用料も払わなければならない。
以上のことが挙げられます。たしかにデメリットもありますが、「新大阪駅に確実に乗り入れられる」ことが一番大きなメリットでしょう。圧倒的に【メリット】>【デメリット】ですので、南海が「なにわ筋連絡線」に乗り入れる案というのは、十分に有効なものだと考えられます。
5.開業後の運転本数・系統を考察
ここから先は、「なにわ筋線」「なにわ筋連絡線」が完成した場合について、どの列車をどれくらい「なにわ筋線」に走らせた方がいいのかを考えていきます。
◇JR西日本―おおさか東線
JR西日本ですが、すでに計画では「なにわ筋線」に
特急「はるか」 :日中2本/時
特急「くろしお」 :日中1本/時 ※(特急「くろしお」とは大阪と紀伊半島を結ぶ特急列車)
関空・紀州路快速 :日中4本/時
が乗り入れる予定となっています。この案は特に異論もありません。では「おおさか東線」についてはどうするのが妥当なのか、考えていきます。
おおさか東線は2019年の3月に新大阪駅~放出駅が開業しましたが、2023年には北梅田駅まで直通運転する予定です。「なにわ筋線」が開業するのは2031年の予定ですが、梅田貨物線はすでに工事が始まっており、2023年には北梅田駅まで開業する見込みが立っています。
そして問題となるのは、おおさか東線から直通する列車が「なにわ筋線」内にも乗り入れるのか否か、ということです。これに対して、3つの案があると考えました。それは
(Ⅰ) おおさか東線の列車をそのまま北梅田駅以南に乗り入れさせる
(Ⅱ) おおさか東線の列車は、すべて「関空・紀州路快速」系統とする
(Ⅲ) おおさか東線の列車は「北梅田駅止まり」にする
というものです。それでは、順を追って説明していきます。
(Ⅰ)おおさか東線の列車をそのまま北梅田駅以南に乗り入れさせる
北梅田駅から南は「なにわ筋連絡線」経由で来た南海電鉄の列車も通ることになるので安易に列車を増発することは避けるべきでしょう。ですが、北梅田駅以南に乗り入れることが不可能なわけではありません。ただ、もし北梅田駅以南に乗り入れるとすると、線内に折り返しができる駅はないので、大和路線もしくは阪和線方面にまで直通運転をしなければなりません。
日中の運転本数を考えると、「①大和路線の普通列車」「②阪和線の区間快速」「➂阪和線の普通列車」のうちのいずれかをおおさか東線まで延伸させることになります。ですが遅延が発生したときなどに、ダイヤが乱れやすくなるほか、阪和線とおおさか東線では使用車両が全く異なっているので、車両はどうするべきか、という問題があります。
≪おおさか東線と阪和線の使用車両の違い≫
≪おおさか東線≫
≪阪和線≫
(Ⅱ)おおさか東線の列車は、すべて「関空・紀州路快速」系統とする
次の案ですが、おおさか東線も関空・紀州路快速も日中は毎時4本の運転ということから、関空・紀州路快速をおおさか東線まで乗り入れさせ、路線を一体化するという方法があります。これによりおおさか東線沿線からなんばや関西空港まで1本の電車でいけるようになります。
ただし、関空・紀州路快速をおおさか東線に直通運転させるとなると、阪和線用の車両がこのままでは足りなくなるので増備などの対策が必要となります。ただ、おおさか東線の各駅のホームは関空・紀州路快速と同じ8両編成まで対応しているので、大きな問題となるのは車両面の問題のみと考えられます。
また、おおさか東線で朝夕に運転される「直通快速」については、運用範囲が広くなりすぎるのを防ぐために北梅田駅での折り返しにするのが良いのではないかと思います。
(Ⅲ)おおさか東線の列車は「北梅田駅止まり」にする
この案は、「なにわ筋線」が開業しても「なにわ筋線」には乗り入れない、という案です。この案だとおおさか東線は独自の車両運用を保つことができ、ダイヤ乱れが発生した場合でも比較的遅延の増大などが防げると思います。
ただし、そもそも北梅田駅に折り返せるスペースがあるのかどうか、ということについてですが、北梅田駅が2面4線で建設されることから、そのうちの1線をおおさか東線専用にすれば対処できると思います。「なにわ筋線」を通るJR直通列車も南海直通列車も北梅田駅で折り返すわけではないので、「なにわ筋線」の列車については2線分(上下線で各1線)の用地があれば足りるだろうと考えられます。また、「おおさか東線」と「なにわ筋線」の対面乗り換えについては、上り線(新大阪駅方面)は新大阪駅で、下り線(なんば方面)は北梅田駅で対面乗り換えできるようにすることで、利便性は損なわずに済むと考えられます(あくまでもJR線直通の列車限定です)。
北梅田駅・新大阪駅での対面乗り換えの模式図
まとめとしては、(Ⅱ)か(Ⅲ)の案が良いと思います。ただ、(Ⅲ)の案については北梅田駅の1線をおおさか東線専用にできるかのが分からないので、できない場合によっては(Ⅱ)の案が良いと思います。
◇JR西日本―大阪環状線
そして、おおさか東線のほかにもう一つ、「なにわ筋線」開業後の運転本数を考えなくてはならない路線があります。それは、大阪環状線です。「なにわ筋線」へ将来乗り入れが想定されている「特急列車」や「関空・紀州路快速」も、現在は大阪環状線を走行しています。それらが「なにわ筋線」を走るようになると、かなり大阪環状線に空きが出ることが分かります。それでは、どのようにしたほうがいいのか、以下の表のように提案したいと思います。
《「なにわ筋線」開業前》
《「なにわ筋線」開業後》
備考
・環状線の種別が快速の列車は、今宮駅・芦原橋駅・野田駅を通過します。
・「大和路快速」とは大阪と奈良方面を結ぶ快速列車です。
この案のポイントは2つあります。1つ目は普通列車の本数が増加した、ということです。現在では、快速列車が通過する今宮駅・芦原橋駅・野田駅の3駅では、毎時4本しか列車が止まらない状態となっています。これを、「関空・紀州路快速」の代わりに大阪環状線の普通列車を入れることで、快速通過駅の停車本数の増加を図っています。
そして、もう1つ強調すべきこと、それは桜島線からの直通列車を日中にも走らせる、ということです。桜島線とは西九条駅と桜島駅を結ぶ路線で、沿線にはユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどの観光名所があります。また、大阪万博の開催地や、カジノを含む統合型リゾートの舞台となる夢洲への延伸計画も出ています。そこで、桜島線を大阪環状線に直通運転させることで利便性を向上させるのが良いと思います。また、運転区間に関しては、特に利用客の多い京橋駅までで良いと思います。
◇南海電鉄
続いては、「なにわ筋線」開業後の南海電鉄の運転本数について見ていきましょう。こちらの予定では
特急「サザン」 :日中2本/時 ※(特急「サザン」とは、大阪と和歌山を結ぶ特急列車)
特急「ラピート」 :日中2本/時
空港急行 :日中4本/時
が乗り入れる予定となっています。南海本線ではこのほかに普通列車が日中4本/h走っていますが、そちらについては従来通りのホームから発車するものでいいでしょう。
南海本線の列車はすべて地下にある南海新難波駅発着(なにわ筋線に乗り入れるかは関係なく)にすればいいのでは?という声も上がりそうですが、南海新難波駅は地下深くに単式ホーム2面2線での建設が予定され、しかも上下線を二層構造にしている関係で、南海新難波駅での折り返しはできないと考えられます。また、朝夕はこれより多くの列車が発着するため、現難波駅のホームは残しておくのがベストでしょう。
そして、こちらも運転本数については異論がないのですが、1つ重要に思うことがあります。それは、「特急列車の停車駅をどうするか」についてです。
現在の特急列車の停車駅からしても、JRと南海の特急列車は性格が異なることがわかります。それは、JRは天王寺駅から関西空港駅までがノンストップであるのに対し、南海は途中、堺駅や岸和田駅、泉佐野駅と、大阪府南部の主要駅にも停車していることです(それぞれ例外な列車もあります)。つまり、南海の特急は速さよりもこまめに集客する、ということに重きをおいているのです。
では、どういった停車駅にするべきなのでしょうか。私は南海新難波駅を出たら、中之島駅、北梅田駅、十三駅、新大阪駅に停車するべきだと考えます。北梅田駅や新大阪駅は停車しても何も異論はないと思いますが、ではいったいなぜ十三駅や中之島駅に停車させる必要があるのか、説明していきます。
(Ⅰ)十三駅の停車について
こちらは阪急からの乗り換え客が一斉に乗ってくることが理由に挙げられます。南海電鉄は特急料金が全区間で510円と、かなりリーズナブルな価格となっているので、「十三駅からはラピートで快適に空港へ!」と宣伝すれば、かなりの集客効果があるのではないでしょうか。また、十三駅は途中駅のため、空港に特急以外の列車で行こうと思っても座れないことがあります。そのため、特急を停車させ、必ず座っていけることをアピールするのは十分得策だと言えるでしょう。
(Ⅱ)中之島駅の停車について
続いては中之島駅についてです。なぜこの駅に特急を停車させるべきなのか、疑問に思う方も多いでしょう。その理由について鍵を握るのが「京阪中之島線」です。
◆京阪中之島線とは
・京阪本線・大阪メトロ谷町線と接続する天満橋駅から中之島駅までを結ぶ路線です。
・沿線地域は中之島と呼ばれ、ビジネス街として再開発などが進められています。・京阪本線とは直通運転を行い、朝夕は本線の優等列車も一部乗り入れます。
・ただし、利用率が低迷しています。
そうなるとなおさら中之島線と乗り換えの出来る中之島駅に特急を止める必要があるのか、余計疑問に感じますよね。ここからは、その理由を3つほど説明していきたいと思います。
その理由とは、
(ⅰ) 「なにわ筋線」の開通で、中之島線が空港アクセス路線の一翼を担うから
(ⅱ) 中之島にはまだ開発の見込みがある用地があるから
(ⅲ) 中之島線が延伸して、中之島駅が交通の要衝になるかもしれないから
の3つがあります。(ⅰ)から順番に見ていきましょう。
中之島線周辺の路線図
※四つ橋線、御堂筋線、堺筋線、谷町線はいずれも大阪メトロの路線
※「渡辺橋駅と肥後橋駅」「大江橋駅と淀屋橋駅」「なにわ橋駅と北浜駅」は徒歩連絡が可能
(ⅰ)「なにわ筋線」の開通で、中之島線が空港アクセス路線の一翼を担うから
この理由については明白です。なぜなら、中之島線が「なにわ筋線」と接続しているからに他なりません。けれども、今までの京阪沿線の空港アクセスはどうなっていたのでしょうか。まずはそこから説明したいと思います。
そもそも京阪電鉄は、関西の6社ある大手私鉄の中で、唯一「キタ」にも「ミナミ」にも乗り入れていません。ただし、これらの場所へは、京阪本線の終点の淀屋橋駅から御堂筋線を使うことで簡単に行くことができます。ただし、関西空港へ行くには御堂筋線に乗り換えた後、なんば駅で南海線、または天王寺駅でJR線に乗り換えなければなりません。そのため、「なにわ筋線」が開通すれば、中之島駅の乗り換えのみで空港に行けることができ、空港アクセスの利便性が飛躍的に上がります。
そのため、中之島駅に特急を停車させることで、十三駅の場合と同じように「中之島駅からはラピートで快適に空港へ!」と宣伝することで、京阪沿線からの乗客を一気に取り込めることができるでしょう。
(ⅱ)中之島にはまだ開発の見込みがある用地があるから
2つ目の理由は、中之島線うんぬんではなく、そもそも中之島についての事情が関係しています。中之島駅付近を通る鉄道は現在も京阪中之島線しかなく、縦に結ぶ路線は一切通っていません。そのため、他の中心部と比べて、まだ開発できるポテンシャルが残っています。現在も再開発が進んでいますが、「なにわ筋線」が開業すると、その開発スピードはさらに上がるため、中之島が発展する可能性は十分あります。そのため、特急列車を停車させるメリットはあると考えられます。
中之島駅に停車中の京阪9000系
中之島周辺の再開発中の写真
(ⅲ)中之島線が延伸して、中之島駅が交通の要衝になるかもしれないから
実は中之島線には、中之島駅から九条駅を経て、西九条駅まで延伸するという計画が存在します。さらにこの計画はかなり現実味を帯びてきているのです。なぜなら、それは「夢洲」が大きく関係しているからです。
夢洲といえば、少し前に桜島線の話をしたときに出てきました。大阪万博の開催予定地でもあり、万博後はIRとよばれる統合型リゾートの誘致が進められている場所でもあります。そして、この夢洲には、大阪メトロ中央線が延伸して乗り入れる計画が出ています。そして中之島線が延伸しようとしている区間の途中駅に当たる九条駅は、大阪メトロ中央線も乗り入れているのです。
京阪としては、当初計画していた社長が「九条駅で大阪メトロ中央線とつなげば、京都とIRのある夢洲が結ばれる」と考えていることから、夢洲へのアクセス向上を狙って、延伸計画を立てていることがわかります。また、西九条駅に乗り入れることで、桜島線とも接続し、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへのアクセスを向上させることもできます。
もしも、中之島線が実際に延伸をしたならば、現在よりもはるかに中之島線は重要な役割を狙うことになります。
以上の3点から、私は特急停車駅に十三駅や中之島駅を入れることが妥当であると考えます。
京阪中之島線の延伸予定の路線図
(JR桜島線と大阪メトロ中央線の夢洲延伸ルートも記載してあります)
実線が現在開業中の路線、破線が現在開業を検討している路線
※なにわ筋線は省略しています
6.「なにわ筋線」構想のまとめ
最後に、この研究を振り返ってまとめを書きたいと思います。
- 「なにわ筋線」構想は、大阪の空港アクセスを大きく変えるものとなる
- この構想によって、JRはなんば乗り入れを達成する
- この構想によって、南海は梅田乗り入れを達成する
- 「なにわ筋連絡線」は建設すべき、そして南海は乗り入れるべき
- 「なにわ筋線」「なにわ筋連絡線」は多大なメリットを与える
- 「なにわ筋線」開業後の大阪環状線は、桜島線からの直通列車を増やすべき
- 「なにわ筋線」開業後の南海の特急列車は、十三駅にも中之島駅にも停まるべき
7.関西の鉄道の将来とは
最後に、この研究のテーマでもある関西の鉄道の将来についてまとめを書いていこうと思います。今回の研究では「なにわ筋線」構想をメインに取り上げましたが、やはりこの構想は「なにわ筋連絡線」構想を含めて早く実現してほしいところです。また、JR西日本と南海電鉄のサービス競争も今以上に高まるかもしれませんね。今後の展開が楽しみです。
次に、京阪中之島線と大阪メトロ中央線とJR桜島線の延伸計画についてですが、実現されればこれらの路線はかなり重要となってくることでしょう。JR桜島線は大阪環状線との直通列車がさらに増えるでしょうし、京阪中之島線は京阪本線から乗り入れる優等列車の数が大幅に増えるでしょう。大阪メトロ中央線も、大阪の東西を結ぶ基幹路線として重要な役割を果たすでしょう。現在、大阪メトロ中央線は東端の終点の長田駅から近鉄けいはんな線に直通運転していますが、近鉄けいはんな線の途中駅にあたる生駒駅では新たな計画が検討されています。それは、近鉄奈良線との直通運転です。現在両線は東生駒駅付近で線路がつながっているものの、集電方式の違いなどから直通運転は行われていません。ですが、大阪メトロ中央線の夢洲延伸が実現すれば、この直通運転も実現に向けてより加速するのではないでしょうか。
このほかにも、阪神本線では近鉄線からの8両編成の列車を直通できるように、一部の駅でホームの延伸工事が行われているなど、現在の関西の鉄道は大きく進化しようとしています。これらすべての計画が実現するのかどうかはわかりませんが、実現することを期待したいと思います。
8.おわりに
まず真っ先に言わせてください。よくぞ最後まで研究を読んでくださいました!えっ途中は読み飛ばしたって?大丈夫です、読み飛ばしたあるいは途中から読んでない人のほうがきっと多数派でしょう(笑)でも、最後まで読んでもらえてうれしいです。
そして、今更言うのもなんですが…分かりづらい研究を書いてすみません。文字多めの研究というのもなかなか卒業できないものですね。そもそも大半の人には馴染みのない「関西の鉄道の将来」のお話ですからね…。はじめは「なにわ筋線」構想以外の計画についてもこのくらい濃く書こうと思っていたのですが、やめておいて正解だったと思っています。ですが、個人的には十分言いたいことを意見出来たつもりなので、一応満足しています。いや、ラストの研究がおそらく最も濃くかけたので、もう大満足です。でも、研究を書き終えた時に1番に思ったことは、「なんとか発注までに間に合ってよかった~」だったような…。まあ、終わりよければすべてよし、ということで…(笑)
ですが、ほっと息つく暇もなく、まだ仕事は残っているのです。忙しいですね…。そして文化祭はいつも以上に気合い入れて頑張るので、「鉃研に来て良かった!」と思ってもらえたら幸いです。
これで…パソコンに向かって執筆するのももう最後…ではありません!執筆予定の旅行記があと2本も残っているのです!こんなところでしみじみしている場合ではありませんでした。というわけで、私の研究はひとまずこれで終了です。またいつか研究を書ける日を私も心待ちにしています。そして、旅行記も忘れずに見てください!では、後ほどお会いしましょう!
最後に…校閲してくださった先生方&研究班のみなさん、そして最後まで読んでくださった読者のみなさんに、感謝の言葉を述べたいと思います。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
9.参考
・大阪市
https://www.city.osaka.lg.jp/
・日本経済新聞
https://www.nikkei.com/
・乗りものニュース
https://trafficnews.jp/
・東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/
・現代ビジネス
https://gendai.ismedia.jp/
・国土交通省
www.mlit.go.jp/
・ほか、JR西日本、南海電鉄、阪急電鉄、京阪電鉄の各鉄道会社の公式ホームページ
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