1.はじめに
こんにちは、**です。タイトルから予想されるものとはちょっと違った内容の研究になるかもしれませんが、最後までご覧いただければ幸いです。
さて、みなさんはJRグループで2019年3月16日に春のダイヤ改正が行われたのはご存知でしょうか?テレビのニュースでもたまに紹介されていたので、聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。なお、ダイヤ改正というのは「鉄道会社が列車の運行時刻を変更すること」と考えていただければよろしいかと思います。
今回のダイヤ改正では主に「おおさか東線が全線開通」「北海道新幹線で東京駅~新函館北斗駅の所要時間が最短で4時間を切る」などがありました。また、「8時ちょうどのあずさ2号」がなくなったことも話題となりました。狩人のヒット曲で歌われたフレーズにもなっていますが、ではなぜ「8時ちょうどのあずさ2号」がなくなったのでしょうか?
今回のダイヤ改正が行われる前は、このあずさ2号は大月駅を8時ちょうどに発車していました。ですが今回のダイヤ改正により、「あずさ号」の全列車が大月駅を通過することになりました。よって「8時ちょうどのあずさ2号」は無くなったのですが、私の研究でポイントとなるのはそこではなく…『あずさ号の全列車が大月駅を通過することに変わった』ということです。実際には大月駅以外にもあずさ号が全て通過することになった駅や、停車する本数が大幅に減った駅もあります。
では、なぜそのように変わったのでしょうか?そこで今回の研究では「なぜ特急列車をはじめとする優等列車の停車駅が減ったり増えたりするのか」を考察していきます。また、「では優等列車の停車便を増やしたら(減らしたら)どのような効果があるのか」ということも併せて考えていきたいと思います。なお、研究で考察した内容は「一個人の意見」として参考にしていただければ幸いです。
2.停車駅を増やす理由とは
まずは優等列車の停車駅を増減させる理由は何かを考えていきます。まずは停車駅を増やす理由について具体例とともに挙げていきます。
(ⅰ)駅の利用客を新たに取り入れるため
具体例としてはJR西日本が運行している「特急はまかぜ」「特急スーパーはくと」の神戸駅(スーパーはくとのみ)・西明石駅・加古川駅の新規停車が挙げられます。
もともとこの両列車は大阪・神戸と山陰地方を結ぶ特急列車です。ですが、JR神戸線内で通勤時間帯における着席ニーズに対応するため、2019年春のダイヤ改正から夕ラッシュ時間帯を走る便の新規停車がはじまりました。なおこのダイヤ改正では「らくラクはりま」という特急列車も新設され、特定の条件下による購入で特急料金を通常よりも割安にすることで、通勤客の特急列車の利用促進を図っています。
このように新たなニーズを取り入れるために特急列車の停車駅を増やす、という場合が考えられます。
JR神戸線の夕方の通勤時間帯の特急列車時刻表
上段が2019年春のダイヤ改正前、下段が改正後の発車時刻(姫路駅のみ到着時刻)
(ⅱ)駅の利用客が増えたため
こちらは具体例が多くあるので、「なぜ利用客が増えたのか」をパターン別に分けて考えたいと思います。
◇駅周辺の人口が増加したため
具体例としては、JR琵琶湖線南草津駅の新快速の新規停車が挙げられます。
そもそも南草津駅が誕生したのは1994年と、琵琶湖線の中でもかなり最近です。また、この駅は草津市が大部分を出資して誕生した請願駅(自治体などが鉄道会社に駅の新設を要望して誕生した駅のこと)でもあります。立命館大学の進出や駅周辺の区画整理事業・宅地開発により駅周辺の人口は急激に増加し、2011年春のダイヤ改正で新快速が新規停車することになりました。なお南草津駅の利用者数は新快速の新規停車後も伸び続け、現在では滋賀県で最も利用者数が多い駅となっています。
また、このほかにもJR内房線の快速列車は新設後、沿線の人口の増加によって徐々に停車駅が増え、現在ではほぼすべての駅に停車する事態となっています。
南草津駅の乗車人員グラフ 2011年春に新快速が新規停車
草津市の人口増加グラフ 著しい増加を遂げています
◇駅周辺に観光地などができたため
具体例としては、JR京葉線海浜幕張駅の特急・快速列車の新規停車が挙げられます。
海浜幕張駅といえば、幕張新都心の玄関口としての役割を持ち、幕張メッセや千葉ロッテマリーンズの本拠地があることでも有名ですが、当初は各駅停車のみ停車していました。その後、先述の幕張新都心への利用者増加などにより1991年のダイヤ改正で快速列車が新規停車し、2000年のダイヤ改正で特急列車も日中時間帯の便が新規停車しています。
(ⅲ)乗り換えの利便性を上げるため
具体例としては以下の表に挙げられるものなどがあります
このように、私鉄の駅を中心として新規停車の例が存在します。例えば、東上線の朝霞台駅は接続するJR武蔵野線からの乗り換え客が増えたこともあり1998年に東上線の主要な優等種別である急行が新規停車することになりました。また、朝霞台駅は2019年の春から新設される「川越特急」の停車駅にもなっています。
(ⅳ)駅に新たに路線が接続したため
具体例としては、東急田園都市線のあざみ野駅が挙げられます。現在同駅には全ての列車が停車しますが、わずか30年前は各駅停車しか止まらない駅でした。ですが1993年に横浜市営地下鉄ブルーラインがあざみ野駅まで開業し、乗り換え駅となったことから利便性向上のためにも急行列車が新規停車するようになりました。
ほかの例としては、現在北海道新幹線の終点でもある新函館北斗駅は新幹線の開業当初から接続する函館本線の特急列車が新規停車しているほか、この開業によって、同区間を通る特急列車のルートも変更されています。
北海道新幹線開業前の路線図
北海道新幹線開業後の路線図
路線図の中で黒色で塗られている路線が青森方面と札幌方面を移動する際に通るルート
(ⅴ)駅隣接の自社の商業施設の利便性向上をアピールするため
具体例としては東武鉄道のとうきょうスカイツリー駅が挙げられます。
現在では都内でも有数の観光地となっている東京スカイツリーですが、このスカイツリーの開業と同時に誕生したのがとうきょうスカイツリー駅です。もともとは「業平橋」という名前の駅でしたが、スカイツリーのオープンに合わせて駅名が改称されたほか、特急列車が新規停車するようになりました。これによって東京スカイツリーへのアクセスをアピールしやすくなり、また利便性も向上し、商業施設の売り上げも上がるなどのメリットがあるでしょう。
また、他には東急田園都市線の南町田駅も2019年秋の商業施設「南町田クランベリーパーク」のオープンに合わせて急行列車が平日にも新規停車する(現在は土休日のみ停車)ほか、駅名も「南町田クランベリーパーク駅」に改称される予定となっています。
停車駅を増やす理由としてはこれらのものが挙げられるほか、他にも種別を統合することによって優等列車が停車する場合(2019年春のダイヤ改正による名鉄南桜井駅の新規急行停車など)が挙げられます。では次に、停車駅を減らす理由を考えてみましょう。
3.停車駅を減らす理由とは
(ⅰ)人口減少によって駅の利用客数が減少したため
近年ではダイヤ改正が行われるごとにJR各社における駅の廃止のニュースを聞きますが、廃止される原因は周辺地域の人口減少がほとんどとなっています。駅の廃止によって維持費などを削減できるため、会社の財政を良くするには効果的な方法であると考えられますが、一方で利用客への配慮も必要となってくるでしょう。
(ⅱ)(利用客数の増減に関わらず)速達性を重視させるため
これは2019年春の中央線特急におけるダイヤ改正が良い例と言えるでしょう。このダイヤ改正で注目すべきポイントは
・塩山駅、山梨市駅、石和温泉駅の「あずさ」全列車通過
・「あずさ」の大月駅、富士見駅、下諏訪駅などの停車便の減少
の2つです。「かいじ」の三鷹駅の全列車通過はどうなの?と思われるかもしれませんが、ダイヤ改正において新宿駅~立川駅間の所要時間は変化していないことから、速達化とは別の理由(乗務員削減のため、新宿駅発車後は検札に長い時間をかけないといけなくなったからだと考えられます)により通過することになったと考えます。
2019年春のダイヤ改正前後における特急「あずさ」の駅別の停車本数(定期列車のみ)
※改正前に比べて停車便が2本以上減便されている駅には背景を灰色にしています
※改正前の「あずさ」には「スーパーあずさ」も含まれます(「かいじ」は含まれていません)
(ⅲ)整備新幹線の開業によって在来線の優等列車が廃止されたため
整備新幹線とは、計画された新幹線のうち、全国新幹線鉄道整備法(昭和45年法律第71号)第7条に基づいて政府が昭和48年(1973年)11月13日に計画した路線のことです。北陸新幹線のほかにも北海道新幹線(青森市~札幌市)、東北新幹線(盛岡市~青森市)、九州新幹線鹿児島ルート(現在開業している九州新幹線のことを指します)、九州新幹線長崎ルート(長崎新幹線はこの路線を指します)が整備新幹線に該当します。
そして整備新幹線の着工・開業にはいくつかの条件があり、その一つに「整備新幹線を開業した際には並行して走る在来線はJRの管轄から分離させる」というものがあります。並行して走る在来線はJR線ではなくなるため、当然JR時代に運行されていた特急列車は廃止されてしまいます。ただし、整備新幹線に並行して走っている在来線があるとはいえ、必ずしも同じルートを通るわけではありません。そこで、「以前は在来線の優等列車が停車していたものの、新幹線が開業したことによって特急が廃止されて停まらなくなり、新たに開業した新幹線さえもその駅には通っていない状態となった駅」が誕生したのです。具体的には蟹田駅、三沢駅、小諸駅、高岡駅などがあげられます。
(ⅳ)ラッシュ時間帯などで分散乗車を促すため
これは具体例を示すのが一番わかりやすいかもしれません。具体例としては小田急線の2018年春のダイヤ改正において通勤急行が新設され、登戸駅を新たに通過するようになった、というものです。その一方で登戸駅には快速急行が停車するようになることで、登戸駅と成城学園前駅・向ヶ丘遊園駅などの利用客をすみ分けることができるようになっています。
2018年春ダイヤ改正前後の朝ラッシュ時に上りで運行される急行系統の停車駅
4.停車駅が増えた/減った場合結果はどうなった?
これまで停車駅が増える理由/減る理由はいったい何なのかを探ってきましたが、それでは停車駅が増えた/減った結果どうなったかを先ほどあげた例の中から検証していきたいと思います。
(ⅰ)停車駅が増えた結果どうなった?
停車駅が増えた結果どうなったのか、もっとも気になることといえば、「その駅の利用者は果たして増えたのか?」ということでしょう。では、次のグラフをご覧ください。
海浜幕張駅の乗車人員グラフ 現在にかけて増えていることがわかる
※1989年に幕張メッセがオープン
※1991年に快速が新規停車
このグラフを見る限りでは乗降客数は増えていますが、増えた背景には幕張新都心の規模拡大などもあるので一概に効果があるとは言いづらいでしょう。ただし、快速停車駅に昇格してから知名度や利便性も上昇し、現在もなお利用者数が増加していることを考えると快速停車駅に昇格したことは英断であると考えられます。
また、停車駅が増えた結果、利便性においてはいずれも向上していると捉えてよいと思います。
(ⅱ)停車駅が減った結果どうなった?
それでは、停車駅が減った結果どうなったのかを見ていきましょう。人口減少による駅の廃止については文字通り「駅の廃止」ですし、先述した中央線特急の例はダイヤ改正から日が浅くどのような効果をもたらしているかがまだわからないので、3章(ⅲ)の三沢駅をモデルに見てみましょう。
なお三沢駅は青森県に位置する青い森鉄道の駅で、2010年の東北新幹線八戸駅~新青森駅間延伸開業までは「つがる」「スーパー白鳥」などの特急列車が停車していました。
三沢駅の乗車人員グラフ 2007年と2012年の差が大きいことがわかる
※2010年に同駅に停車していた特急列車が廃止(八戸駅~青森駅間)
グラフより、特急列車の廃止によって同駅の乗降客数は廃止前の3分の2ほどにまで落ち込んでいることがわかります。このことから特急列車の廃止によって駅の乗降客数は減るほか、街の衰退にも繋がってしまうでしょう。(ⅲ)の例の1つである小諸駅前の風景は、実際に現地で確認したところ新たに新幹線が通ることになった上田駅前や佐久平駅前(いずれも小諸駅周辺に位置しています)と比べて衰退していました。
特急列車の廃止などはその地域の活性化に悪影響を与えることからやむを得ない事情がない限りはするべきではないと考えます。ただし、停車便の減便などについては利便性が劣ることはありつつも全体的なメリットを考えると、前後の駅で普通列車などに接続するなどして利便性をある程度確保したうえで、減便を行うことも一つの手だと考えます。
5.今後の提案
ここまで停車駅の増減に関していろいろと見てきたわけなのですが、では今後この列車はこの駅に停車/通過したほうがいいのではないか?という提案を私なりにしていきたいと思います。あくまでも乗降客数やダイヤから推察したものなので、ご了承ください。
CASE1 【S-TRAIN】 新規停車させるべき駅:永田町駅(もしくは池袋駅など)
まずはS-TRAINがどういう列車なのかを簡単にご紹介します。S-TRAINは西武鉄道や東京メトロなどが運行する座席指定列車のことで、平日と土休日で運行区間が異なっています。平日は所沢駅~豊洲駅間、土休日は西武秩父駅~元町・中華街駅間で運行されています。今回は平日運行のS-TRAINに関しての提案です。
平日運行のS-TRAINは豊洲駅、有楽町駅、飯田橋駅、石神井公園駅、保谷駅、所沢駅の順に停車し、ターミナル駅である池袋駅を通過するという特徴があります。現在の運転本数ですが、上りは所沢駅を6:24、8:37に発車する2本が、下りは豊洲駅を18~22時の毎時00分に発車する5本が設定されています。つまり、西武鉄道の地下鉄直通のライナーに位置づけられる列車と考えていただければよいと思います。
そしてこのS-TRAINのなにが問題であるかというと、それは乗車率です。筆者がニュースサイトや個々人が乗車した記録を見る限りでは、朝の上り便は高い乗車率であるものの夜の下り便はいずれもかなり空きがあると考えられます。また、S-TRAINが西武池袋線から直通する東京メトロ有楽町線では待避可能駅が1つもないことから有楽町線内では前の各駅停車に追いつかないように続行運転を強いられることとなります。よって続行運転をしている割に乗車率が芳しくないならば停車駅を増やして需要をさらに確保したほうがよいのではないか、と提案します。
そして新規停車させるべき駅の1つとして永田町駅を挙げたいと思います。赤坂見附駅の連絡乗換を含めると半蔵門線、南北線、銀座線、丸ノ内線の4路線と乗り換えられるうえ、駅周辺には国家の中枢の役割を担う建物が密集していることもあり、通勤客の利用が多いことから新たな需要を確保することができると考えられます。また、永田町駅だけでは需要が確保しきれない場合は現在通過している池袋駅などに停車させることも1つの手ではないかと思われます。
CASE2 【つくばエクスプレス 快速】 新規通過させるべき駅:南千住駅など
つくばエクスプレスとは秋葉原駅と茨城県のつくば駅を結ぶ路線で、開業が2005年と新しいことや路線がすべて高架、掘割、地下区間で踏切が1つもないという特徴があります。また、つくばエクスプレスは最高時速130kmと高速で運転しており、秋葉原駅とつくば駅の間を最速45分、北千住駅とつくば駅の間は最速33分で結んでいます。
このようにとにかく速いという印象があるつくばエクスプレスですが、秋葉原駅~北千住駅間は全列車が各駅に停車しています。そのためこの区間では他の鉄道と同じくらいの速度(つまりつくばエクスプレスのほかの区間よりは遅い速度)で走っていることになるのですが、乗降客数は北千住駅よりも秋葉原駅のほうが多いことから比較的秋葉原駅まで乗りとおす人が多いことがわかります。
よって、利用客の利便性を考えると秋葉原駅~北千住駅でも通過運転を行い、そして通過させるとしたら南千住駅が妥当ではないかと考えます。理由としては南千住駅の乗降客数がほかの駅と比べてもかなり少ないこと、南千住駅で乗り換えられる路線はすべて北千住駅で乗り換え可能なので乗り換え客の利便性も損なわれないことが挙げられます。また、浅草駅に関しても乗降客数がそこまで多いわけではなく、他路線の浅草駅や観光地としての”浅草”からも多少距離があることから通過させてもいいのではないかと考えられます。
また、両駅を通過させる列車を設定するとして、通過運転を行うのは「快速」だけが良いと考えます。朝の時間帯は列車の間隔が狭く通過しても前の列車に追いついてしまうので通過する意味が薄れること、昼の時間帯の「区間快速」についても現在は前を走る各駅停車との間隔があまり広くない(上り列車)ことが理由に挙げられます。(「快速」は朝の上りでは走っていません)
つくばエクスプレスの路線図 今回提案するのは浅草駅と南千住駅の快速通過について
6.おわりに
この研究を書き終わって気づいたのですが、停車駅が増える/減る理由って結構あるものですね。ただただ探していったことを書いただけの研究になってしまいましたが、個人的には一応満足できました。最後に書いた提案は個人的な要望みたいなものなのであまり気にしないでくださいね。それと、提出するのが遅れてごめんなさい。
さて、次回はいよいよ鉃研にいる時では最後に書く研究となります(おそらく将来は研究を書かない気がしますが…)。悔いのない研究を書けたらと思います。なお現時点ではテーマすら決まっていません…。それでは、旅行記編でまたお会いしましょう!おわりに、最後まで読んでくださった方のために感謝の言葉を申し上げたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
7.参考
総務省統計局
www.stat.go.jp/
西武鉄道Webサイト
www.seiburailway.jp/
JR西日本 West Japan Railway Company
www.westjr.co.jp/
滋賀県HP
www.pref.shiga.lg.jp/
JR東日本:東日本旅客鉄道
www.jreast.co.jp/
小田急電鉄
www.odakyu.jp/
つくばエクスプレス:TSUKUBA EXPRESS
www.mir.co.jp/
0コメント