1.はじめに
こんにちは。中3の※です。研究副班長という役職に就いたものの、これまで考察の浅い研究しか書けていないので、努力していきたいと思います。
さて、今回は旅行記を見ればほぼ必ず出るとも言えるJRで運転される夜行快速についての研究となります。明治時代から運行されてきた夜行列車も、クルーズトレインや団体臨時列車を除けば、「サンライズ瀬戸・出雲」と「ムーンライトながら」と「ムーンライト信州」のみとなりました。
このように、夜行列車が少なくなる中、夜行快速の存続は可能であるのかについて執筆したいと思います。筆者もこれまで3回ほど利用しており、今後の動向が気になるところです。拙い文章ですが、最後まで読んでいただければ幸いです。
2.夜行快速の概要
まず、研究を始めるに当たり、この夜行快速について説明したいと思います。今回は「ムーンライト」系統の快速列車についてのみ扱います。また、「ムーンライト」を以下MLと省略して表記します。
(ⅰ)現在の運行
現在、運行されているML系統の夜行快速は「MLながら」と「ML信州」で、それぞれ東京駅-大垣駅間と新宿駅―白馬駅間で運行されています。「ML信州」は基本的に下りのみの運行となっていて、諏訪湖で花火大会があるときの臨時列車として上り列車が運行されることがあります。
▲「MLながら」で使用される185系(10両)
▲「ML信州」で使用される189系(6両)
それぞれ全車指定席の快速列車で、主に青春18きっぷ利用期間に臨時で運行されているため、指定席料金の520円を払えば青春18きっぷを利用して乗車できます。
※青春18きっぷとは
JR全線の普通列車・快速列車が1日乗り放題になるきっぷです。春休み・夏休み・冬休みに発売されます。5回分がまとめて発売され、1回分は2370円です。
(ⅱ)運行開始の背景と経過
この系列の夜行快速が運行開始されたのは、1987年のことで、JR東日本が新宿駅―新潟駅間を結ぶ快速「ムーンライト」を臨時で設定しました。この列車が設定されたのは、関越自動車道全通に伴い1985年に開業した夜行高速バス路線の「東京―新潟線」に対抗するためでした。そして、翌年の1988年に定期列車に格上げされるとともに、運行区間が村上駅まで延長されました。
その後、JR西日本が臨時で「ML山陽」や「ML九州」などの列車の運行を開始しました。1996年にはJR東日本で「MLながら」の運行が開始され、同じJR東日本での運行のため、「ムーンライト」が「MLえちご」に改称され、その後には臨時で「ML信州」が運行開始されました。「MLえちご」と「MLながら」は2009年まで定期列車でしたが、それ以降は臨時での運行となっていました。
この二つ以外は運行開始時から臨時での運行となっていました。
これらの他にもさまざまな列車が設定されました。(以下全列車一覧)
※「ML松島」と「ML横浜」は運行回数が少なく、運行が複雑なため省略
このように、国鉄民営化のころから多数の列車が運行されてきたものの、そのうちの殆どが現在は運行されておらず、使用された車両も殆ど廃車になっていて、現状はかなり厳しくなっています。
3.衰退した要因
前述のように、ML系統の列車は2005年以降かなり減少しています。青春18きっぷと併用すれば、格安で移動が可能なのですが、なぜこのようになっているのでしょうか?
(ⅰ)高速バスとの競合
衰退している大きな原因の1つとして、高速バスの発達が挙げられます。現在では、夜行快速の運転は青春18きっぷ発売期間のみとなっているため、「安く」・「長距離」の移動は高速バスというイメージが定着しているといえるでしょう。
高速バスの輸送人員は次のようになっています。
国土交通省資料より一部抜粋して作成
※1(資料より引用)
平成17年度までは、当該系統距離の半分以上を高速自動車国道、都市高速道路及び本四連絡道路を利用して運行する乗合バスを高速乗合バスとした。平成18年度からは、系統距離が50km以上のものを高速乗合バスとした。
※2昭和は「S」、平成は「H」と表記しました
グラフを見て分かるように、高速乗合バスの輸送人員はずっと増加傾向にあることがわかります。現在では、このグラフによれば、日本国民のほぼ全員が年に1回は乗っている計算となります。
高速バスの輸送人数が増えていることには、「①価格が安い②直行での移動可能③本数が多い」などが挙げられます。
①価格が安い
例えば、東京から大阪まで夜行バスを利用すると、5000円程度ほどしか掛からず、さらに、日程にもよりますが安いものでは1500円程度のものもあります。それに対して、青春18きっぷを利用しなければ、JRは運賃だけで9000円ほどです。そのため、今まで鉄道を使っていた人の枠がバスに奪われてしまったと思われます。
バスの運行は鉄道と比べ人件費が少なく済み、車両の整備も比較的負担が少ないので、このような価格での運行が実現しています。
②直行での移動が可能
価格が安いことに次いで、これも需要増加の要因になっていると思われます。鉄道での輸送の場合、大規模な輸送には適していますが、小規模な輸送には向いておらず、直行便の設定には難点が多いです。そのため、長距離の都市間の移動では、大都市ならばよいものの、乗り換えが必要になる場合が多くなります。
一方、バスならば小規模の輸送が可能で、定員が少ないため、需要が少ないところにも直行便の設定が容易です。また、東京ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンなどの特定の場所への直行便もバスならば可能であり、この点も鉄道の弱点です。
③本数が多い
前述のように、小規模の輸送が可能なため、本数を増やすことも容易であり、需要への対応が容易です。本数が多ければ、出発時間や到着時間の選択肢が増え、利便性が向上します。
このように、バスは鉄道では弱点である点をカバーすることができたために、輸送量が増加したと考えられます。また、バスでは快適性の向上もなされていて、少々価格が上がるものの、設備に力を入れ、「豪華で快適」という方面への力も入れられています。そのため、低運賃での中・長距離での移動において、鉄道はバスに太刀打ちできなくなっています。その結果、ML系統の列車は青春18きっぷ利用でしか、利点がなくなってしまったと思われます。
(ⅱ)運行車両の老朽化
そもそも、運行に使われていた車両は、団体用の客車や余剰車を用いたものであり、さらに、青春18きっぷ以外ではバスに対抗できなくなり、JR各社はこれらの列車の運行に積極性がなくなったと思われます。前述のように、使用車両は国鉄型がほとんどであり、老朽化がひどかったと思われます。しかしながら、夜行快速だけでなく、ほかの夜行列車や客車列車が減少していく中、(ⅰ)の理由や料金が安いがために収入があまり大きくなかったこともあり、新型車両を入れることがなかった結果、2000年代にML系統の列車が大幅に減ってしまったと思われます。
▲EF65と12系・14系客車(オロ12-10はML松山での使用あり) 右:比留間太一氏提供
4.「MLながら」と「ML信州」の存続
では、このように衰退している中、現在残っている「MLながら」と「ML信州」の存続は可能であるかについて、需要と車両の老朽化の影響を踏まえて考察していきたいと思います。
(ⅰ)「ML信州」について
(1)需要面
まずは、「ML信州」の指定席の空席状況について見ていきたいと思います。
※空席照会サイトJR CYBER STATIONより(アクセス日9月7日)
これは、新宿10月6日発のものですが、青春18きっぷ発売期間外にもかかわらず、満席となっています。これは、中央線沿線には北アルプス・南アルプスや八ヶ岳連峰などがあり、有名な山も多いことにより、登山者の利用が多いためだと考えられます。また、近年は登山ブームとなっていることもあり、今後も多少は登山客の需要が続くと思われます。
※長野県資料より
このグラフは、「ML信州」の運行区間である長野県の登山者数の推移で、このようにほぼ横ばいではあるものの、少し増加傾向にあることがわかります。
※長野県資料より
これは、長野県全体での登山者の年齢構成ですが、グラフのように、60代が最も多いものの、あまり偏りはなく、これからの登山者の需要はそれなりに安定すると思われます。
(2)車両面
現在使用されている189系は長野車両センター所属のN102編成であり、1970年代に製造されたため、老朽化が進んでいます。中央線では、現在特急「スーパーあずさ」に使用されているE351系を新型車両のE353系で置き換えることも決まっており、今後中央線では大きな動きがあるでしょう。実際、豊田車両センターの189系M50編成も引退が発表されています。
▲189系を置き換えるとみられるE257系
▲スーパーあずさ運用の置き換えが進む
E351系
現状では、N102編成は平日運転の快速「おはようライナー」や多客期の臨時特急「あずさ」・「かいじ」、その他の臨時列車の運用に就いています。ですが、臨時特急「あずさ」・「かいじ」が廃止となることはあまり考えられないため、E351系かE257系で置き換えられると思います。
概要で触れた上りの「ML信州」の運転にE351系が使われたこともあり、新車導入に関する問題は解決できると思われます。
このように、需要面・車両面の問題はそこまでなく、さらに、「ML信州」はJR東日本管内のみでの運行となっているので、ほかのJR東海やJR西日本との兼ね合いの必要もなく、存続は可能と考えます。
(ⅱ)「MLながら」について
(1)需要面
では、「MLながら」の指定席の空席状況を見ていきましょう。
※空席照会サイトJR CYBER STATIONより(アクセス日12月19日)
これは東京12月22日発のものですが、満席となっています。また、冬季の運行期間(12月22日~1月2日)はすべて満席となっています。これは、青春18きっぷ利用での首都圏と中京・関西間の移動需要が大きいためだと考えられます。前述のように単純な移動ではバスに劣るものの、青春18きっぷ利用ならば、夜行列車の夜間移動という利点と1日乗り放題という利点が重なること、つまり、青春18きっぷと「MLながら」を同時に使えば安く移動できるうえ、移動時間の短縮が可能になっていることが要因となっていると思われます。
「MLながら」は10両編成で運転されるうえ、運転日も多いため、需要が多くあることは確かです。そのため、需要面では存続は可能です。
(2)車両面
現在使用されている185系は特急「踊り子」に使用されていますが、1981年に登場し、前述の189系と同じように老朽化が進んでおり、中央線のE257系で置き換えられると報道されています。そのため、後継車の確保に関しては問題がないと思われますが、運行区間の大部分がJR東海の管轄であるため、運行にはJR東日本とJR東海との調整が必要であり、E257系への置き換えの際に「MLながら」が廃止になる可能性はあると思います。なぜならば、「MLながら」は夜行列車であるためJR東海の負担も大きく、新車導入の際、乗務員訓練も行う必要がある割に指定席代が安いからです。そのため、車両面では少し問題を感じます。
しかし、前述のように現在も運転日数が多く需要もあるため、現状維持で存続できると思います。また実現性は低いですが、指定席代の収益が少ないならば、多少の値上げは可能だと考えます。
「MLながら」の指定席券は出発日にもよりますが、発売開始日(出発日1か月前)に満席になることが多く、希少性が高いため、オークションサイトに出回ることが多いです。例えば、オークションサイトの一つの「ヤフオク!」で12月22日出発の指定席券を検索すると、120件を超えるオークションがヒットしました。1枚当たり520円以下で落札されたものもあるものの、最大で3倍弱ほどで落札されたものもありました。つまり、裏を返せば、多少値段が上がっても利用する需要はあると思います。なお、転売行為は旅客営業規則に違反することがあり、実際に逮捕例もあることをここで付け足しておきます。
また、青春18きっぷ利用を促進する点でも重要な運行区間であるため、総合的に見て存続は可能であると思います。
5.おわりに
本当は現状の問題点についても触れたかったのですが、時間がなく断念しました。今回、執筆時間が短くなってしまったうえ、考察も浅く、文章構成も拙くなってしまいました。また、文章内容もやや強引なところが多くなってしまいました。
最後までこの文章を読んでいただきありがとうございました。
6.参考資料
・時刻表でたどる夜行列車の歴史
・国土交通省 http://www.mlit.go.jp/common/000117170.pdf
・長野県公式ホームページ https://www.pref.nagano.lg.jp
・JR CYBER STATION http://www.jr.cyberstation.ne.jp/vacancy/Vacancy.html
・産経ニュース http://www.sankei.com
・ヤフオク! https://auctions.yahoo.co.jp/
Web公開に伴い、一部表現を変更させていただきました。また、
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