茨城の鉄道に対する脅威について

1.はじめに

 こんにちは。中学3年の〇〇です。諸事情により、初めての投稿となりました。まだ拙い部分もありますが、温かい目で読んでいただけると幸いです。

2.茨城県にある鉄道への脅威とは?

 まず、茨城県の何が鉄道に影響を与えているかを見ていきましょう。それは、石岡市(霞ケ浦の北側に位置)にある『柿岡地磁気観測所』(この後は『観測所』と表記)のことです。この建物はとても広く、その広さは実に東京ドーム1.3個分にもなります。この中では地球の地磁気(地球から出ている磁石の力〈コンパスの赤い針が北を向くのもこれによるもの〉)を観測していることから、建物には観測値に影響が出ないよう磁力を持たない木や銅などを利用し、広大な草原も用意されています。そして同じく観測への影響が出ないように、観測所から半径30㎞以内を通る鉄道には磁力を多く発する直流での運転を禁止し、影響が少ない交流や、影響のない非電化による鉄道などを使用した運転を命じています。これによって多くの会社に影響が出ているのです。それでは次に、具体的にどの会社が影響を受けている、もしくは受けていたかを紹介します。

3.観測所による影響を受けた鉄道会社

 ここでは、観測所によって運転方法の工夫、また対応できず廃止となるなどの影響を受けた会社を紹介します。

(1)交流電化によって運転している鉄道会社

 まずは先程軽く説明した交流電化によって運転している鉄道会社を紹介していきます。交流とは、電流の向きを高速で入れ替え、また電磁波を出来る限り相殺して運転する方法です。では、この方法を取り入れている鉄道会社を見ていきましょう。

①JR東日本(東日本旅客鉄道)常磐線、水戸線

 一つ目はJR東日本の常磐線と水戸線を挙げていきます。この二路線はどちらもE531系などといった交直流電車(交流と直流のどちらにも対応)を利用しています。常磐線では特急列車にもE657系といった交直流電車が使用されています。

JR東日本の交直流列車の代表格E531系

北関東~東北を130km/hで走るE657系

 この2路線には直流と交流の境界に二つの電流が混じらないようにするためにデッドセクションと呼ばれる電気が通らない区間を利用しています。昔の蓄電池を持っていない列車ではデッドセクションを通るときに車内の照明などが消えていましたが、最近の列車では蓄電池によって照明が消えることはありません。

②つくばエクスプレス(首都圏新都市鉄道)

 次に秋葉原~つくば間を結ぶつくばエクスプレスを見ていきましょう。この路線は基本的な最高時速は130㎞/h(常磐線の特急と同じ速さ)という速さになっています。この路線では守谷駅~つくば駅間を交流で運転しています。TX-1000系を除く全列車が交直流電車です。この路線は開業当初から常磐線との競合が激しく、高速性能を持った列車を多く製造していて、その上に高価な交流設備を置くのはとても困難なものでしたが、観測所への影響を抑える為に設備を整えています。

130km/hで走行する快速

つくばエクスプレスの最古参TX-1000系

 

(2)非電化によって運転している鉄道会社

 次にディーゼル車などの非電化車を利用した列車を使用している鉄道会社を紹介します。

①関東鉄道

 関東鉄道は、常総線と竜ケ崎線の二路線を持っています。このどちらでもディーゼル車を使用して運転しています。常総線はラッシュ時には1時間9本の、中小私鉄にしてはなかなかの本数を運転しますが、交流電化を行うほどの資金は用意できませんでした。そこで、少しでも電化を目指すために先程ご紹介したデッドセクションを直流区間同士の間に入れるという直直デッドセクションというものを計画しましたが、予算が大きく膨らむことが分かりこの計画も白紙になってしまったため、今でも非電化車を使用しています。

②鹿島臨海鉄道

 この路線は鹿島神宮駅~水戸駅(鹿島神宮駅~鹿島サッカースタジアム駅間はJR所有)をつなぐ路線です。この路線でも非電化車が使用されています。実はこの路線には高架区間の端の部分には電化のための電柱を入れるとみられる穴が開いているのです。しかし、JRが所有している鹿島神宮~鹿島サッカースタジアム間は直流電化されているため、電化するためには交直流電化しなくてはなりません。しかし予算が全く足りず、今でも非電化方式がとられています。

(3)-α余儀なく廃止をされた鉄道会社

 次に、観測所の影響によって廃線に追い込まれた鉄道会社について説明します。

①鹿島鉄道

 まずは、2007年に廃止となった鹿島鉄道を紹介します。

 この鉄道会社は1924年に「鹿島参宮鉄道」として運行を開始しました。この鉄道会社は元から電化する計画がありましたが、当時はまだ交流電化が知られていなかったので、電化には至りませんでした。その後廃線となるまで気動車で営業を続けていましたが、2001年に収入の多くを占めていた近くの航空自衛隊百里基地への燃料輸送の貨物営業が終了となり、そのあと立て直せずに2007年に廃止となりました。

②水戸電気鉄道

 次に、水戸電気鉄道について紹介します。水戸電気鉄道は、1929年に下水戸~常陸長岡間に「水戸石岡電気鉄道」という名前で運転を開始しました。この鉄道会社の最終的な目標は、水戸~石岡間を短距離で連絡するというものでした。もしこの鉄道会社が完全開業し、つくばエクスプレスと手を組んでいたのなら、常磐線は今残っていないかもしれません。

 それはともかく、この路線は名前の通り元は電化を目指していましたが、もちろん観測所側によって拒否されてしまいました。そうなので蒸気機関車やガソリンカーを使用していました。その後遅れて許可が下りましたが、その時には資金も底をつき、もはや電化と言っている余裕もなくなってしまいました。その後1936年に運行を停止、そのまま1938年に廃止となってしまいました。

(3)-β現在廃線とはなったものの直流電化に成功した鉄道会社

 最後に、今は残っていないのですが、廃止以前に観測所30㎞内での直流電化に成功した鉄道会社を紹介します。

①常南電気鉄道

 まずは1929年に設立した常南電気鉄道についてご紹介します。ところで、直流電車は、なぜ観測所周辺では使用することができないのでしょうか。その理由は、直流の場合、地面に漏れ電流が流れるためです。この漏れ電流を抑えるために、常南電気鉄道は一本の電線から回収した電流をもう一本の電線から返す方法によって漏れ電流を発生させないようにしていました。今ではトロリーバスなどがそのいい例です。しかし、摩擦や電線から電気を集める柱が離れてしまうなどの関係で、速度の制限を余儀なくされ、ついには同区間を走るバスよりも所要時間が長くなり、1938年に廃線となってしまいました。

②茨城交通

 最後に、1923年に開業した茨城交通(旧水浜鉄道)についてご紹介します。

 この路線は、普通の鉄道で使用されている直流1500V(V:ボルト・鉄道の上の電線に走っている電気の強さを表す単位)ではなく、大きく抑えた600Vでの走行となりました。これにより、地面への漏れ電流を最大限抑えて直流での運転が許されました。しかし、電流が弱い分出力も小さくなり、移動速度に劣ったためモータリゼーションの波にのまれ、茨城鉄道への統合後の1966年に廃線となってしまいました。

4.観測所付近での運転方法のまとめ

 次に、今までの方法を全体的な視点で見るためのものとして、今までの鉄道会社の運行方法をまとめていきたいと思います。なお、採用路線は今回の研究に出てくるもののみ掲載しています。

(1)交流電化

【概要】電流の向きを高速で入れ替え、また電磁波を出来る限り相殺して運転する

【採用路線】JR東日本・つくばエクスプレス

【特徴】電気の漏れが少ない・ディーゼル車よりも騒音が少ない・老朽化が遅い・開発費が高い・直流電化よりも費用が多くかかる

(交直流車の場合)エアセクションなどの設備を整えなければならないので費用が高い

(2)非電化・ディーゼル車

【概要】電気ではなく、ガソリンなどの化石燃料を使用して運転する

【採用路線】関東鉄道・鹿島臨海鉄道・鹿島鉄道・水戸電気鉄道

【特徴】電気の漏れが出ない・交流電化よりも開発費が安い・騒音が大きい・老朽化が早い

(3)工夫をしたうえでの直流電化

【概要】電気を回収する方法や電圧を下げるなどの方法により運転する

【採用路線】常南電気鉄道・茨城交通

【特徴】費用を大きく抑えられる・速度が抑えられる

5.考察

 今までのものから、私なりに直流電化、なおかつ低いコストでの運転方法を考えてみました。

 この案は、比較的に常南電気鉄道のものに似ていて、一つの電線から回収した電気を使用してもう一つの電線に使用済みの電気を流す方法です。

 しかし、常南電気鉄道のものをそのまま採用した場合、電線と電気を集める柱が離れ、電気が集められなくなることがあるため、速度を落とす必要があります。それを抑え、速度の向上を図るためには、形を通常のパンタグラフのようなものにして電線と触れる面を増やすといった工夫があげられます。しかし、従来のパンタグラフでは回路の変化によりショートしてしまいます。そこで、集電側と放電側の間に不導体(電気の流れない部分)を入れることで、ショートを起こさずに漏れ電流を抑えることができ、接触の問題も解決するので、速度を上げられるようになると考えました。

      

6.まとめ

 これまで、様々な鉄道会社が地磁気観測所による制約を、交流電化、非電化など様々な方法で乗り越えてきましたが、やはり直流電化のほうが費用も安くすむので、いろいろな工夫をしたうえで直流電化を目指した鉄道会社があることについて述べていきました。ここで、わたしは不導体を使用した直流電化を使用することで、費用を抑え、また速度を向上させつつ運転することができると考えました。これで今茨城では鉄道に関して何が起こっているかについてと、これからどのような対策をすればいいかについて理解していただけたら幸いです。

7.おわりに

 初めての執筆でしたが、いかがでしたでしょうか。鉄道会社にとって地磁気観測所が大きな影響を与えたということがわかっていただけたら幸いです。このような非常に読みづらい研究を読んでくださり、

本当にありがとうございました!

8.参考資料

地磁気観測所 Kakioka Magnetic Observatory

https://www.kakioka-jma.go.jp/

JR東日本

https://www.jreast.co.jp/

つくばエクスプレス(TSUKUBA EXPRESS)

https://www.mir.co.jp/

関東鉄道|地域のふれあいパートナー

https://www.kantetsu.co.jp/

鹿島臨海鉄道株式会社

https://www.rintetsu.co.jp/

【ちょっと前の懐かしい歴史】鹿島鉄道について

https://namegata.mypl.net/mp/history_namegata/?sid=18160

明治~昭和初期の鉄道計画と石岡の先人たち - 石岡市

https://www.city.ishioka.lg.jp/jgcms/admin68311/data/doc_dummy/1483577871_doc_191_0.pdf

阿見町に走っていた鉄道 | 予科練平和記念館ブログ

https://www.yokaren-heiwa.jp/blog/?p=3298

茨城交通水浜線―水戸の観光・名所・名物を巡ってみよう

https://mito-ibaraki.mypl.net/article/kankou_mito-ibaraki/29119

おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました。掲載されている情報は研究公開当時のものです。現在とは若干異なる場合があります。

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