羽田空港輸送のこれから

1.はじめに

 みなさんこんにちは。遂に研究班長に就任しました、〇〇です。たった一人で班をまとめていくというプレッシャーは想像以上に辛く、今にも逃げ出したい気分ですが、今日も元気に研究を書いています。

 ところで、この「停車場121号」は中学2年生のデビュー作でもあります。みんな、分からないながらも試行錯誤しながら執筆している姿は、何か微笑ましいものを感じます。まだまだ駆け出しの中2ですが、これからの活躍にご期待ください。

 さて、今回のテーマは「羽田空港輸送のこれから」です。コロナ禍の昨今の情勢を考えると「なんて時期外れのテーマなんだ」と、思われてしまいそうですが、今回は、コロナ禍だけでなくコロナ後も含めて考察していこうと思います。拙い文章ですが最後までお読みいただければ幸いです。

2.羽田空港輸送のいま

 では、羽田空港の概要と羽田空港輸送の現状を見ていきましょう。

 羽田空港は東京都大田区に位置し、正式名称は「東京国際空港」で、1931年に東京飛行場として開港しました。現在では3つの旅客ターミナルと4本の滑走路を備え、成田空港と並び、東京や首都圏の空の玄関口となっています。平成30年度の航空旅客数は約8,489万人で国内1位です。また、羽田空港は東京都心に近く、政府による訪日外国人増加の政策やインバウンド需要の拡大もあり、かなり注目が高まっています。

 羽田空港への輸送は主に「京急空港線」「東京モノレール羽田空港線」「リムジンバス」の3つがあります。

京急空港線(以下空港線)は京急蒲田駅から京急本線へ直通し、三浦・横須賀・横浜方面と品川・都営浅草線方面・成田空港まで広がるネットワークがあります。空港線は品川駅~羽田空港第3ターミナル駅を最速11分で結び、また2019年10月1日からは、空港線利用時に運賃に加算される加算運賃を減額するなど、羽田空港輸送に力を入れています。

東京モノレール羽田空港線(以下東京モノレール)は浜松町駅を起点とし、湾岸部の工業地帯を通り羽田空港へ至る路線です。一見羽田空港輸送に特化した路線も見えますが、沿線の住宅地や工場・流通施設への通勤路線としても利用されています。また、浜松町駅~羽田空港第3ビルを最短13分で結びます。

リムジンバスは東京23区や、その他首都圏の主要都市を結んでいて、行き先・所要時間・運賃等は会社によって大きく異なります。空港線や東京モノレールと違い柔軟な運行がされています。

品川を出発し羽田空港に向けて走る京急線の「エアポート急行」

羽田空港から浜松町に向かう東京モノレール

3.新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響

 みなさんご存じのとおり、2019年12月ごろから中国湖北省は武漢を震源地として、世界に急速に蔓延した新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)は、我々の健康への脅威となるばかりか、日本中・世界中の経済を停滞させ、その影響は運輸業・観光業にも打撃を与えています。先ほど紹介した京急空港線や東京モノレールまた、羽田空港そのものも大幅な旅客数の減少が発生しています。

では、これらの影響を見てみましょう。以下の表Aをご覧ください。


表からわかるように、京急線では6割減、羽田空港の国際線に至っては9割減と、悲惨な結果となってしまっています。勿論これは、入国制限や渡航の自粛が原因であり、世界的な新型コロナウィルスの流行が収束するまでは回復することはないでしょう。

4.京急空港線の引き上げ線設置計画

 空港線の引き上げ線設置計画とは、空港線の終点である羽田空港第1・第2ターミナル駅の先に約200m(18m級8両分)のトンネルを新たに掘り、引き上げ線を2線設けるという計画です。引き上げ線とは終着駅に到着した列車などが一時的に引き上げる線路のことです。この引き上げ線設置により、列車の折り返しの効率をあげ、羽田空港発着の列車を増発することで、主に都心方面からの利便性を向上させる目的があります。現行の配線と、引き上げ線新設後の配線を以下に示します。

 

この引き上げ線を設置することにより、以下図のように列車を入れ替え、交差支障なく折り返しさせることができます。それによって、先ほども述べたように、効率的な運用ができるようになります。ちなみに交差支障とは、主に列車が折り返す際に、他の列車と動線が被ってしまい、同時に運転ができない状態を指します。


 

 また、列車の増発以外にも、運転整理に活用したり旅行客向けのライナーのような列車を設定したりすることもできます。”コロナ後”の空港輸送の需要を見据えれば悪くない計画だとは思います。しかしながら、この計画はまだ具体的な調査や建設にかかるコストの計算などがまだ行われていないので、まだまだ未知数のままです。

5.JR東日本羽田空港アクセス線

 2021年(令和3年)1月20日付けで東日本旅客鉃道(JR東日本)羽田空港アクセス線の鉄道事業許可が下りましたが、研究の執筆中に発表された為、深く考察できませんでした。しかし、羽田空港へのアクセスに大いに関係があるので紹介しようと思います。

 羽田空港アクセス線は、現在休止となっている東海道貨物線の浜松町駅付近~東京貨物ターミナル間(通称大汐線)を再利用、また東京貨物ターミナルと羽田空港新駅(仮称)を結ぶトンネルを新たに掘削し、羽田空港と品川・東京を直結する路線です。今回許可が下りた区間は東京貨物ターミナル~羽田空港新駅(仮称)間の約5.0kmで、事業費は約3000億円、開業は2029年(令和11年)を予定しています。現在の計画では運行本数は1日で72本、1時間当たり4本が見込まれています。

また、羽田空港アクセス線以外にも上野東京ラインなど、JR東日本の広範な路線ネットワークを通じて羽田空港へ行く列車が設定されると思われます。運行形態や使用される車両など具体的なことはまだ発表されていませんが、コロナ禍の今に許可が下りるということは、やはり”コロナ後”を見据えているでしょう。

 さて、ここで問題となってくるのが東京モノレールの未来です。現在東京モノレールの株式は79%をJR東日本が持っており、東京モノレールはJR東日本グループの傘下にあります。しかし今回JR東日本が自社で羽田空港へのアクセス路線を建設するにあたり、ほぼ全区間で競合する東京モノレールの行く末が一体どうなるのか、全くの不透明です。

先ほども述べたように、東京モノレール羽田空港輸送だけではなく沿線の足となっているので廃線などというのは到底考えられませんが、しかし羽田空港輸送のシェアは羽田空港アクセス線に取られてしまうのではないでしょうか。

6.羽田空港輸送のこれから

 この研究のタイトル通り、羽田空港輸送のこれからを考えてみようと思います。

 まず、“コロナ禍”の状況について考えていこうと思います。ここで一つ留意していただきたいのが、日本では新型コロナウィルスの感染が落ち着き、旅行などの比較的「不要不急」である外出が緩和されているという仮定の下、考察を行っていくということです。

世界中で新型コロナウィルスが猛威をふるっている状況では、海外旅行する旅行客はほとんど居ないのではないかと思われます。その分国内旅行は活発となると予想されます。また政府による旅行代金を補助するキャンペーンのGo Toトラベルが再開するとなれば国内旅行の市場は活発化するでしょう。そして、羽田空港は首都圏に住む人々が地方の観光地などへ旅立つ玄関口となるのは想像に難くないでしょう。その際に羽田空港輸送を担う交通機関ができることはあまり多くはないでしょう。利用客はほぼ全員が日本人なので特別な案内が必要ではありませんし、現状のままで問題はないと思われます。一つ挙げるとすれば、国内旅行においてに飛行機と競合ずる新幹線とどのように闘っていくことになるのかという観点がありますが、これは羽田空港輸送の交通機関というよりも、航空会社の営業戦略の問題なのでやはり、空港輸送との関係は薄いと思います。

次は、ワクチン接種などで新型コロナウィルスの感染が減り、世界中で旅行ができる時代になったどうなるのか考えてみようと思います。

まず、一つ言えるとすれば、最初は少ないにしても、次第に訪日外国人数は増えていくと思われます。その根拠としては“コロナ禍”以前の訪日外国人数が年々増えてきていたからです。訪日外国人数の推移を次のページのグラフに示します。

このグラフのようにコロナウィルスが世界中に蔓延する以前は、政府による政策も手伝って訪日外国人数は年々伸びてきていました。“コロナ後”もインバウンド(外国人が訪れてくる旅行)需要を狙った政策が打ち出されていくと思われます。

羽田空港輸送の各交通機関でも、より一層外国人向けの案内やサービスを拡充する必要に迫られます。拡充すべきものとしては、多言語の電光掲示板や自動放送、また駅窓口での多言語案内の社員育成や設備導入などです。いずれも直ぐには導入できるものではありませんから、コロナ禍の今に準備しておくのも良いでしょう。

以上のことを以下表にまとめます。


7.おわりに

 今回の研究はいかがだったでしょうか。今回のテーマは先行きの不明な空港輸送の焦点を当ててきました。このコロナ禍という状況もあってあまり情報を集めることもできず、第6章では自分の妄想を書き連ねてしまったような、そんな感覚があります。

今回の研究で、成田空港と並び日本と世界をつなぐ玄関口たる羽田空港、その羽田空港と首都圏をつなぐ羽田空港輸送の重要性を理解してもらえれば幸いです。

現在、日本における新型コロナウィルスの感染状況は他の先進国と比較すると、そこまで芳しくないようですが、それでもいつ感染が拡大するのかわかりません。学生の今にこのような“コロナ禍”に巻きもまれてしまったことに対して、どうしようもないやるせなさと自分の運命に対する憤りさえ覚えます。しかし、私の人生はまだ始まったばかりで、今はただじっと堪える時期なのだと、そう思って過ごしています。まだ見ぬ後輩達が鉄研で不自由なく鉄道趣味を満喫できる世界になること心から願います。

最後までお読みいただきありがとうございました

8.参考文献

・京急電鉄HP

 https://www.keikyu.co.jp

・東京モノレールHP

 http://www.tokyo-monorail.co.jp

・Airport Limousine 東京空港交通HP

https://www.limousinebus.co.jp

・東京国際空港ターミナル株式会社HP

 http://www.tiat.co.jp

・日本空港ビルディング株式会社HP

 https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/company

・東洋経済

 https://toyokeizai.net

・Go toトラベル 旅行者向け公式サイト

 https://goto.jata-net.or.jp

・日本政府観光局(独立行政法人国際観光振興機構)

 https://www.jnto.go.jp/jpn/index.html

・国土交通省

 https://www.mlit.go.jp

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