コロナ禍の鉄道会社について

1.はじめに

 みなさんこんにちは。よろしくお願いします。年度始めから鉄道研究部で活動する気満々でいたのですが、始業式前から新型コロナウイルスが流行し始業式も遅れ、結果的に入部する時期も遅れてしまいました。さて、この研究では、現在も猛威を振るっている新型コロナウイルスへの鉄道会社の対策や、今だからこそすることのできる新事業について研究していこうと思います。

2.新型コロナウイルスについて

①ウイルスの種類

 新型コロナウイルスとはコロナウイルスの一つで、そのコロナウイルスと一般の風邪の原因となるウイルスの相違点について、次のような説明がなされています。

一般の風邪の原因となるウイルスや、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」ウイルスが含まれます。ウイルスにはいくつか種類があり、コロナウイルスは遺伝情報としてRNAをもつRNAウイルスの一種(一本鎖RNAウイルス)で、粒子の一番外側に「エンベロープ」という脂質からできた二重の膜を持っています。自分自身で増えることはできませんが、粘膜などの細胞に付着して入り込んで増えることができます。

△厚生労働省HPより引用

②感染拡大状況

 現在(2020年11月)においては、新型コロナウイルスの感染者は世界で約4800万人、日本では約10.4万人で、新型コロナウイルスによる死亡者は、世界で約124万人、日本では約1800人となっており、日本では欧米の諸外国にくらべ、感染者数も死亡者数も少なくなっています。

③インフルエンザとの主な違い

 新型コロナウイルスはインフルエンザと違い致死率が高く、子供や若者の間では無症状感染者が多いため、無症状で感染していることを知らない間に高齢者に感染させ、高齢者が重症化もしくは死亡する恐れがあります。また、新型コロナウイルス用のワクチンは日本では今のところあまり普及していないため、インフルエンザよりも注意しなければなりません。

3. 新型コロナウイルスが与える鉄道会社への影響

①利用客数の減少

 日本では、新型コロナウイルスが東京などの都市部で爆発的に流行したことにより、地方へコロナウイルスを持ち出さないようにするために多くの人が長期休暇中などの地方への帰省や旅行地方へのビジネスによる出張が控えめになっています。 そのため、新幹線や特急列車の利用率も減少していて、鉄道会社の経営に今もなお打撃を与えています。また、鉄道会社が抱えている百貨店やホテル、不動産事業も新型コロナウイルスによる営業時間の短縮などを強いられたため、そのような利用客も減少しています。今のところコロナウイルスの感染がなくなる見通しはなく、新型コロナウイルスへの特効薬や予防ワクチンが開発されるまでこの状況はしばらく続きそうです。

GW期間中のJR新幹線・特急列車利用状況

 実際、JR東日本では、前年に比べて上り下り両方が5%ほどと落ち込んでいて、コロナウイルスが大きく影響していることがわかります。

②鉄道利用率に伴った収益の減少

 もちろん利用客の減少に伴い収益も減少しています。JR東日本では、4月1日から6月30日の第一四半期決算の営業収益が2019年の同時期に比べ約56%減少していて、初めての営業損失を計上しています。

4.感染対策について

 JR東日本では新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、車内では、換気や車内設備と駅設備の定期的な消毒、駅では消毒用アルコールの設置や窓口にアクリル板設置をしています。また、利用者にマスク着用やソーシャルディスタンスの呼びかけを行っています。

5.新型コロナに伴った新事業

①新幹線での貨物輸送

 現在、新幹線や特急列車において乗車率がとても低くなっています。そのため、利用されていない車内のスペースを利用して貨客混載での新幹線による貨物の輸送などにより、新型コロナウイルスの感染拡大により悪化した収益の改善を図る計画がJR東日本やJR西日本で挙がっています。

②リモートワーク用スペースの貸し出し

 東急グループの東急不動産の子会社である東急リゾーツ&ステイ株式会社では「日帰り/デイユースプラン」というものが期間限定で作られました。それは、日中に東急ステイの一部屋を借りて、そこでリモートワークを行うことを推奨するもので、ホテルなどでの宿泊が避けられるようになり、利用客が減ったホテルをリモートワークのために利用してもらうことで収益増加を図っています。また、JR東日本ホテルメッツでも同様のデイユースプランを実施し、テレワーク用スペース貸し出しによる集客を図っています。

6.利用率の向上

①Go To トラベルについて

Ⅰ.内容

 現在日本では、Go To トラベル といった政府の、宿泊を伴う県外への旅行を推奨するためのキャンペーンが実施されています。対象期間は2020年の7月22日から2021年の1月31日までです。Go To Travel が適用されると、旅行額の2分の1を政府が支援するというもので、その2分の1の70%は旅行代金の割引に、残りの30%は旅行先で使うことができる地域共通クーポンとして支援されます。割引最大は、1人1泊で2万円の割引になっています。しかし、Go To トラベルを適用するための方法は旅行会社のパッケージを購入しなければ受け取ることが出来ないことになっています。

本事業における参加事業者登録を受けた事業者の提供するキャンペーン適用商品を申し込み・購入することが基本です。 当該商品を購入する際に、本事業による割引支援額を差し引いた額を旅行者から旅行業者等に支払うこととなります。

△国土交通省 Go To トラベル事業公式HPより引用

Ⅱ.割引の受け取り方法

 Go To Travel が適用される旅行パッケージを旅行会社の窓口で購入すると、予約完了後に割引されたうえにその場で地域共通クーポン(紙クーポン)を受け取ることができます。インターネット上でパッケージを購入した場合、二種類の地域共通クーポンの受け取り方があり、紙クーポンと電子クーポンの二種類となっています。紙クーポンを受け取る場合、宿泊施設にてチェックインする際に受け取ることができ、電子クーポンの場合は予約確認メールに添付されているURLのサイトにおいて必要事項を記入すると受け取ることができます。宿泊施設にて直接、宿泊商品購入するとその宿泊施設でチェックインした際に紙クーポンを受け取ることができます。

Ⅲ.Go To トラベルを利用したパッケージ

 上記のようにして受け取ったGo To トラベルを利用することで、普段の旅行が割安になったり、比較的高価なプランであっても普段する旅行と同じ価格になったりします。そのパッケージ内において新幹線や特急列車の利用を含む、または鉄道会社のホテルの利用を含むことで収益の向上を図っています。

②旅行先での鉄道以外の利用

 JR東海が企画している「ずらし旅」は旅行先でバイクシェアやタクシーでの移動を含んだ旅行パッケージで、旅行先でのバスや電車移動による混雑や三密の回避を促しています。

Ⅰバイクシェア

 バイクシェアは、JR東海がdocomo bike shareとコラボレーションしていて、パッケージを申込みJR東海ツアーズの切符売り場にてパスカードを受け取ると、その日は終日docomo bike shareでの自転車のレンタルができるようになっています。

Ⅱ観光タクシー

 観光タクシーには主に東京観光のプランがあり、定員二名の観光用タクシーにガイドや接遇サービスの一定条件を満たした「東京タクシー観光認定ドライバー」が運転します。ドライバーは出庫・帰庫時に検温を行ううえ、マスクの常時着用、こまめなアルコール消毒を行うことになっていて、コロナ禍でも安心です。

7.さらなるコロナウイルス感染流行の収束に向けて

 未だ感染収束の見通しがつかない新型コロナウイルスの感染流行をできるだけ抑えるためには、鉄道においてもさらなる対策が必要です。そして「新しい生活様式」として日常化させなければなりません。鉄道の利用も日常生活の一部であるので、「新しい生活様式」としての様々な感染症対策が必要になるのではないかと思います。そのため、今のうちから試験的に行うべき感染対策方法を挙げていきたいと思います。

①混雑率に基づいた時間帯別運賃

 時間帯別運賃とは、朝ラッシュ時や夕ラッシュ時の混雑を少しでも緩和するため、ピーク時に乗車した場合の運賃を割増させ、オフピーク時の運賃を割安にするというものです。この案は、実際に導入が検討されているものです。時間帯別運賃は、ロンドン地下鉄(Transport for London)で実際に導入されています。これを導入することで多少の混雑緩和があるのではないかと思います。

②混雑率に基づいた地域別・場所別運賃

 これは、混雑の多い駅区間において運賃を割り増しすることで混雑を緩和するもので、これもロンドン地下鉄で導入されています。これも、日本ではあまり導入されていないので、東京周辺の都市圏で導入することで多少なりとも混雑緩和ができるのではないかと思います。

③郊外からのピーク時の人の流入を防ぐ

 これは、朝ラッシュ時や夕ラッシュ時における郊外からの人の流入を防ぐため、一日乗車券や往復券の利用可能開始時間を、朝ラッシュが終わった9時頃からというようにして都心部の鉄道の混雑状況を緩和させるというもので、これもロンドン地下鉄で行われていて、「ロンドン市内交通一日乗車券付き往復券」として郊外の駅の出発を9時30分以降にすることを条件として割引がされるようになっています。

8.まとめ

・現段階の鉄道会社のコロナ対策

車両内の換気や、駅でのアクリル板と消毒用アルコール設置、マスク着用とソーシャルディスタンスの呼びかけ。

・経営面でのコロナ対策

旅行先でのコロナ対策を謳ったパッケージやGo To トラベルを利用したパッケージの販売。さらに、利用率が下がった列車による貨物輸送。

・今後必要となる感染対策

混雑率に基づいた時間帯別運賃や地域別運賃、ラッシュ時の出勤以外による混雑を防ぐ。

9.終わりに

 初めての研究かつ鉄道がそんなに好きというわけでもないので、どんなものを書けばいいのかよくわからなかったですが、自分なりにできるだけ鉄道要素を盛り込んだつもりです。つぎは今回以上にいいものをかければいいなと思っています。早く新型コロナウイルスが収束し、心おきなく外出を楽しめる日が来るといいなと思います。最後までお付き合いいただきありがとうございました。

10.参考文献

・旅行者向け Go To トラベル事業公式サイト

https://goto.jata-net.or.jp/

・JR東日本

https://www.jreast.co.jp/

・東洋経済オンライン

https://toyokeizai.net/

・Newsweek

https://www.newsweekjapan.jp/

・東急ステイ

https://www.tokyustay.co.jp/

・厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/index.html


おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました。掲載されている情報は研究公開当時のものです。現在とは若干異なる場合があります。

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